中国メディア・環球時報は11日、日本の老舗書道用具メーカーを見学して「永遠に捨てることのない匠の精神を感じ取った」とする記事を掲載した。見学した製造現場で感じたのは、今の中国社会が目指すべき方向性だったようだ。

 記事が紹介したのは、創業100年以上を誇る奈良市の書道用具メーカー・呉竹だ。記事は、同社工場内にある墨の製造工房を訪れたことを紹介。「あたかも時間が固まったようであり、100年の歴史を持つ墨づくりの手順と方法が守られていた」とし、墨の材料をもみ込む作業場では顔も服も手も真っ黒にした「匠」が力を込めて黒いかたまりをもみ込んでいたと伝えた。そして、温度や湿度によって材料の配分を変える必要があるという墨作りの「匠」になるためには少なくとも10年の修練が必要であること、「匠」の練った墨には、素人がやっても出ない鮮やかな光沢が出てくることを説明した。
 
 そのうえで、同社の綿谷昌訓社長が「1902年の設立以降、最大の危機が第2次大戦後にやってきた。米国の占領下で学校での書道が禁止されたためだったが、そのが逆境のなかで質への追求をさらに強めたことで苦難を乗り越えることができた」、「面倒がることなく最高の質を求め続ける。これが職人気質である」と語ったことを紹介。同時に「未来を見据えて積極的に新製品を開発することも大切であると強調した」とし、長年の研究の末に1997年に開発した「水筆ぺん」のほか、同社がこれまでに書道、絵画に関連した約2000種類の新製品を開発してきたことを伝えている。

 記事はまた、同社長が中国の同業種企業を視察した際に「多くの工場で、伝統的な墨の製造方法が伝わっていない」ことを感じたとしたほか、同社には製品開発や品質確保のための実験室があり、その研究者が「現在中国で作られている墨は脆く、すぐに折れてしまう」と語ったことを併せて紹介した。

 記事が紹介した呉竹のエピソードは、まさに今製造業をはじめとする中国社会全体において声高に叫ばれている「伝承と革新」を体現したものであると言えるだろう。古きよきもの、確かなものを守りつつ、現代のニーズに合わせてさまざまな可能性を模索し、新しいものを生み出していく、そんな姿勢が求められているのである。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)