日本経営管理教育協会が見る中国 第448回--磯山隆志

■「君の名は。」が中国で公開

 「君の名は。」は日本で2016年8月に公開されたアニメーション映画である。公開と同時に興行的に大ヒットし、週間の興行成績において9週間連続の1位となった。これまでに国内観客動員数で1,700万人を超えており、興行収入においても230億円を超えている。これは現時点で日本の歴代興行収入ランキング4位、邦画の中では歴代2位の記録である。今でも週間興行成績のランキングでは上位に位置しており、記録を伸ばし続けている。さらに、アジアをはじめとした世界各国でも公開されヒットしており、日本を含む世界興行収入では日本映画の中で歴代1位になったとされる。現時点で125の国と地域での海外配給が決まり、4月から北米でも公開されれば記録は一層伸びると予想される。

 中国では12月初めから公開となっている。中国は海外映画の公開に審査があり、1年間に上映される海外映画の数も決まっている。そのため、日本で公開されてから半年以上遅れることが多いとされる状況で、約3カ月での公開は異例の速さといわれる。公開されたスクリーンの数も6万7千を超える日本映画として最大の規模であり、これも異例といわれる。

■日本映画として最大のヒット

 こうした人気を受け、中国においても公開と同時に大ヒットしている。初めての週末興行収入ランキングで1位となったほか、観客動員数は2週間で約1,900万人と日本を超えた。興行収入においても日本映画の中で歴代1位となり、最大のヒット作となった。

 中国でヒットした要因については様々な見方がある。映像の美しさを挙げる声もあれば、各国で人気が盛り上がっているなか、異例のスピード公開が実現したタイミングの良さを挙げる声もある。さらには現在の中国と韓国との関係について言及する声もある。

 また、今回の中国での記録的なヒットにより、ビジネスの観点から今後の日本映画の海外進出について指摘する向きもある。政府も日本映画を輸出産業の柱として育てるべく検討会議を設置した。特に、急激に拡大する中国市場への期待は大きい。このようなことから進出する方法の一つとして、中国を意識した内容にすることを挙げる声もある。しかし、意識する必要は、あまりないのではないだろうか。世界的に歴史に残るほど評価の高い日本映画は、日本的な風習が描かれていることが少なくない。「君の名は。」のなかにも日本人であっても知らないような風習が描かれている。人が感動するのは異なる環境や時間を過ごした人達が、信頼や協力の関係を築いて困難を克服する姿にあるのではないかと思う。これからも、中国において、より多くの感動的な日本映画が公開されることを願うばかりである。(執筆者:日本経営管理教育協会・磯山隆志)(写真は日本経営管理教育協会が提供。東京の映画館で「君の名は。」のポスター)