日本経営管理教育協会が見る中国 第446回--水野隆張

■中国の高級官僚の海外逃亡が相次いでいる

 中国の習近平指導部が進める「反腐敗」政策を担う共産党中央規律検査委員会の全体会議が2017年1月6日、北京で始まり、習総書記は「腐敗を懲らしめる力を決して弱めてはならない。積極的に国家監察体制改革を進めなければならない」と主張し、厳しい反腐敗政策を続けていく決意を示した。一方、この習近平体制下の中国では、高級官僚の海外逃亡が相次いでいる。

 中国当局は、家族や資産を海外に移し国外脱出する官僚を「裸官(らかん)」と呼んで取締りを強化しているが、専門家によると「習体制下で、すでに800~1000人が中国を捨てた」と言われている。逃げ出すのは官僚だけではない。彼らがためこんだ巨額の資産も海外に流出している。海外に脱出した汚職官僚の総資産を合わせると約20兆円、中国の国家予算の5分の1にもなる計算だといわれている。

■孔子の郷「曲阜」の内宅門の外側にある「貪障壁」

 貼付写真は2009年夏に山東省の孔子の郷「曲阜」に行ったとき内宅門の外側にある「貪障壁」と呼ばれている目隠し壁である。この壁に描かれている怪獣は、麒麟に似て、麒麟に非ず、すべての宝物を我が物にし、「太陽さえ食い尽くしかねない貪婪(どんらん)之獣」だ。府人に賄賂をとって法を曲げることを厳しく戒めるためにここに描かせたものだという。

 中國では王朝時代の地方役人の俸給は極めて少なくて、その主たる収入源は年貢の割り増し徴収であった。規定以上に年貢を徴収し、それを着服するのである。中央の役人は直接に年貢を着服する立場にないから、もっぱら収賄と横領に頼った。当時肉は高級食材だったため、賄賂用に使われたところから府の下に肉を書いて汚職腐敗の腐と讀んだ。

 それが今では「金と女」に変わっているということである。2千数百年も前から汚職腐敗が延々と続いている中国人の官不信は歴史的なもので、官=権=役得=蓄財の等式は何千年にわたって中国人の意識の中に刻み込まれてきたものである。

■水至って清ければ、すなわち魚なし、人至って察なれば、即ち徒なし

 その意味するところは、「あまりきれいな水には魚はすまない。同様に、あまり細かいところにまで目のとどく人のもとには、人材が集まらないものである」ということである。

 鄧小平の改革開放政策以来中国の官僚はひたすら金を求めて成長路線を追求してきた。
 ところが、習近平政権になってからは厳しい統制のもとで贈収賄は勿論のこと贅沢禁止令まで出されて宴会までもが規制され、高級料亭の倒産までもが見受けられるようになっているようである。中国官僚のやる気は著しく削がれていると言わざるをえないであろう。

 そのうえ、厳しく取り締まっている習近平一族がパナマ文書に資産隠蔽の名を連ねていることが明るみに出れば、人心の指導部不信は嫌が応にも高まらざるをえないであろう。

 習近平政権は愛国主義を高めるために覇権主義を唱って海洋進出を進めているが、早かれ遅かれ人心の不満が高まり、内部崩壊の方が先に発生するのではないかと危惧するところである。(執筆者:日本経営管理教育協会・水野隆張)(写真は日本経営管理教育協会が提供。曲阜の内宅門の外側にある「貪障壁」)