日本経営管理教育協会が見る中国 第444回--水野隆張

■トランプ次期大統領の選挙中の過激な発言

 米国の次期大統領トランプ氏は選挙期間中以前から、対日・対中政策に関して過激な発言を繰り返してきた。日本の安全保障については、かって、「朝鮮半島で戦争が起こっても、アメリカは関わらない。日本と韓国にはグッドラックだ!」と発言しているところから「尖閣を守ってアメリカになんのメリットがあるんだ? 尖閣のために、アメリカは中国と第3次大戦を始める気はない!」とすら言われる可能性がありそうだとまでいわれてきたほどである。トランプ氏は米中貿易改革も公約の一つであり「中国製品の輸入関税を45%にする」と極論を展開し、さらに「中国は米国民が飢え死にすることを望んでいる」と発言するなど敵意をむき出しにしていた。

■一時米国の対中強硬論が後退する場面もあった

 ところが、大方の予想を覆して米国の次期大統領に当選してからは、いちはやく中国の習近平主席と電話連絡をして習主席とトランプ氏は「連絡を密に取り、実務的に良好な関係を築き、相互利益や2国間関係の発展に向けて意見交換するため早期に直接会談を行うことを約束した」ということが伝えられたところから、やはり米国は米中経済関係を重視せざるを得ないのだろうという見方が強まり、その後習主席と近いブランスタド・アイオワ州知事を中国大使に指名したことから、その見方はさらに強まったのである。

 さらに、親中派の代表ともいえるキッシンジャー元国務長官を北京に派遣したことから、対中強硬論はかなり後退するようになった。

■一転して対中強硬路線への転換

 驚いたことには、ここから事態は急変することになる。キッシンジャー氏がまさに北京を訪れている最中に、トランプ氏は台湾の蔡総統と電話会談をして、習主席を怒らせて、キッシンジャー氏の面子を丸潰れしたのである。トランプ氏は、中国の反発に対して、「一つの中国」という考えにはとらわれないと、中国に基本認識自体を否定する発言をした。そこで、トランプ次期政権の対中路線は、強硬路線となることが判明することとなったのである。

 これに対して当然中国は米国の出方を探るために、東シナ海で日本の領空を脅かし、南シナ海では米国の無人水中捜査船を拿捕したが、米国の強硬な抗議に応じて中国軍はこの無人捜査船の返還を約束せざるを得なくなったのである。中国軍はまだ戦争しても米国には到底勝てないと認識しているので軍事行動には慎重をならざるを得ないのである。しかし。これからも米国の強硬策に対して見過ごすということは考えられないであろう。

■次々と対中強硬路線の人事配置

 その後トランプ氏は親ロであると同時に中国嫌いとされているエクソンCEOのティラーソン氏を国務長官に指名し、さらには、ホワイトハウス内に貿易政策を担当する「国家通商会議」を新設し、トップに対中強硬派で知られるピーター・ナバロ・カリフォルニア大学教授を起用すると発表した。

 政権移行チームは、ナバロ氏の起用は「米国の製造業を再び偉大にするという次期大統領の決意を表している」と述べている。しかしながら、多くの経済学者は「中国との貿易で攻撃的な措置を取れば、貿易戦争が始まる懸念があり、悪影響は双方に及ぶ」と警告している。

■日本政府は日米同盟の再構築に取り組まなければならない

 新トランプ政権は2017年1月20日に発足するが、警戒を強める中国は当然日米同盟の今後の動向を探るために日本政府に対して強硬な挑発を繰り返すことが懸念される。これに対して従来のようにアメリカが日米同盟に基づいて当然助けてくれると考えることは極めて危険であると言わざるを得ない。最近のニュースでは、海上保安庁は、東南アジア各国の「海上保安機関」を支援する専従組織を2017年度に立ち上げる方針を決めたという。

 中国が南シナ海で海洋進出を活発化させるなか、軍と分離した警備機関を充実させることで、軍事衝突を避ける狙いもあるということである。日本政府としては短期的には当然中国の挑発に対しては即刻対応できるように準備を怠らず、同時に長期的には日米同盟の絆をさらに固めるように努力を怠らないようにすべきであろう。(執筆者:日本経営管理教育協会・水野隆張)(写真は日本経営管理教育協会が提供。2001年防衛省昇格前の赤坂の防衛庁跡地)