2016年3月に中国の全国人民代表大会で発表された政府工作報告に「匠の精神の育成」が盛り込まれたことは、中国に匠の精神が欠けていることを示す出来事であったと言える。

 中国メディアの海外網は12日、本当に中国に匠の精神は存在しないのか、また日本に比べて中国の匠の精神は劣っているのかという点について論じる記事を掲載した。

 記事は中国にも確かに匠の精神は存在すると説明。例えば「我在故宮修文物」というドキュメンタリーフィルムに登場する匠たちは、国家文物を守るために伝統的な技を駆使し、仕事がどれほど膨大かつ繁雑でも孤独に耐えつつ、「自分の心を込めて」国宝を保護する仕事に携わっていると紹介した。

 一方で、「中国の匠の精神を日本と比べたとき、なぜ日本よりも卓越しているという感じがしないのだろうか」と問いを提起。この問いの答えとして「匠たちに対する社会の関心が足りない」という点を指摘。匠たちは往々にして目立たない人びとであるのに対して、現在の中国社会は金銭や地位で1人の人間の成功の度合いを計っているため、物質的なものを追求しない匠たちは簡単に見過ごされてしまうと説明した。

 つまり記事の要点は、中国に存在する匠の精神を中国社会が高く評価していないことが問題の根本的な原因の1つであるということだ。これは非常に説得力のある見方であり、社会が匠の精神に大きな価値を見出していないなら、この道を進もうという意欲を持つ職人も確かに育ちにくい。しかし日中両国における匠の精神に対する感じ方の違いは、日本人と中国人の人生観の違いにも関わる問題であり、拝金主義がはびこる中国社会において、匠の精神を日本人のように高く評価するようになるというのは、決して簡単なことではないだろう。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)