(5)“长凳”を“条凳”だなんて

 聞き手にとっては、阿Qが城内から戻ってきたことは“叹息而且快意”、もったいなくてため息が出る一方、いい気味だと痛快でもあるのですが、

  据阿Q说,他的回来,似乎也由于不满意城里人,这就在他们将长凳称为条凳,而且煎鱼用葱丝,加以最近观察所得的缺点,是女人的走路也扭的不很好。

 阿Qの話だと、城内の人たちに対する不満もあって戻ってきたらしいのです。

 何が不満かというと、城内の連中は“长凳”(板でつくった長い腰掛け)のことを“条凳”と呼ぶとか、魚の空揚げに葱(ねぎ)のみじん切りを添えるとかであるが、加えて、最近の観察によると、女が歩く時、妙(みょう)な尻の振り方をするが、あれはけしからんと言うのである。

(6)“小鬼见阎王”

  然而也偶有大可佩服的地方,即如未庄的乡下人不过打三十二张的竹牌,只有假洋鬼子能够叉“麻酱”,城里却连小乌龟子都叉得精熟的。什么假洋鬼子,只要放在城里的十几岁的小乌龟子的手里,也就立刻是“小鬼见阎王”。

 けれどもまれには感服すべきところもないわけではない。例えば未荘の田舎者たちは三十二枚の竹の牌(パイ)しか打つことができず、“麻酱”を打てるのはニセ毛唐だけだが、城内では鼻たれ小僧でも上手に打つ。ニセ毛唐なんか、城内の十五か六のチンピラ小僧にかかっても「閻魔さまの前に出た小鬼」みたいなもんだ、というのである。

(7)“赧然”“凛然”

 この話に聞き手は“赧然”(nǎnrán)、顔を赤くして恥じ入った。

 “你们可看见过杀头么?”おまえら、首をちょん切るのを見たことがねえだろう? 突然阿Qが言った。

 “咳,好看。杀革命党。唉,好看好看,……”ヘン、面白えぞ。革命党を殺すのさ。そりゃ面白えのなんの……。阿Qは首をふりふり、ちょうど真正面にいた趙司晨(チャオスーチェン)の顔に唾を飛ばした。この話に聞き手は“凛然”(lǐnrán)、ぞっとして背筋が寒くなった。

  但阿Q又四面一看,忽然扬起右手,照着伸长脖子听得出神的王胡的后项窝上直劈下去道:“嚓!”

(8)“悚然”“欣然”

 だが、阿Qはまた周りを見回し、ふと右手を上げると、首を伸ばしてじっと聞きほれていた王鬍(ワンフー)(ひげの王)のぼんのくぼ目がけてサッと振り下ろした。「バサッ!」

 王鬍については先に“君子动口不动手”ということわざを紹介した時にちょっと触れましたね。ご記憶でしょうか。自分よりも王(ワン)の方が威勢よくシラミを噛みつぶしているのが面白くないとけんかを挑んで逆にやられたあのひげ面の日雇い仲間です。

 王鬍は驚いて跳び上がり、電光石火のごとく首をすくめますが、聞き手はみな“悚然”(sǒngrán)、恐れてぞっとし、また“欣然”(xīnrán),欣然(きんぜん)として喜びに浸ります。

 以来、王鬍は長いこと頭がおかしくなり、二度と阿Qのそばへは近づこうとはしなくなったと言います。(執筆者:上野惠司)(イメージ写真提供:123RF)