日本経営管理教育協会が見る中国 第439回--三好康司

 私は、前職で繊維関係の貿易業務に従事していた。昭和60年(1985年)に入社したが、その2年後くらいに一気に円高が加速し、繊維業界にも海外生産の波が押し寄せたことを覚えている。その中でも、特に海外での生産移管が進んだのが衣料品(アパレル)である。
 当時は安価な人件費と豊富な労働力を強みに、中国はアパレル縫製の一大拠点となっていった。しかし、中国の人件費の上昇、及び「チャイナリスク」を回避するために、アパレル各社は東南アジアに縫製拠点を分散させるようになった。しかし、最近、アパレル生産の中国回帰が見られるという。一体、何が起こっているのであろうか。

1.衣料品輸入の状況

 日本繊維輸入組合の統計によれば、2015年の全世界からの衣類(衣料品)輸入総額は、約3兆3千億円である。うち、中国からの輸入は約2兆3千億円、シェア68%とダントツの一位となっている。しかし、2010年以降の中国からの輸入シェアをみると、次のように年々シェアは低下している。

  2010年/83.3% ⇒ 2011年/80.9% ⇒ 2012年/78.2%
  ⇒ 2013年/75.6% ⇒ 2014年/71.7% ⇒ 2015年/68.0%

 2015年の衣類輸入国の二位以下をみると、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、イタリア、カンボジア、ミャンマー、タイ、インドと続いている。イタリアを除き、全てアセアン諸国、アセアン近隣国であり、アパレル各社が「チャイナプラスワン」政策として、生産拠点を移動していることが分かる。

2.わが国アパレル各社の現状

 昨今のアパレル業界では、百貨店を主な販路とする大手アパレル各社が苦戦している。ワールドは昨年480店舗を閉鎖、オンワードホールディングスは今年度約110店舗、三陽商会は約80店舗を閉める計画をしているといった具合である。 消費者の商品を見る目が厳しくなり、品質が良くて値段の高い商品は売りづらくなっている。また、流行が常に変動する衣料品の特性もあり、アパレル各社は、ますます、売り逃しが起きないよう、タイムリーな商品投入を求められるようになってきている。

3.今、なぜ中国か?

 日経ビジネスに、某アパレルメーカー社長のインタビューが掲載されていた。
 『「過去は大量生産、大量消費で、値下げ販売しても最終利益が残るというムードでやっていたが、それでは通用しなくなった」と話す。東南アジアで生産すると、中国よりも店に届く時間が長くなり、売れ行きに合わせて機動的に商品を作りにくい。その結果、過剰在庫が生まれやすくなると見て、戦略を練り直す。(以上、日経ビジネス2016年11月14日号より抜粋)』

 アセアン諸国に比べ、中国では生地やファスナーなど副資材が調達しやすいことや、地理的優位性もあり、中国回帰が進んでいるようである。過去に、アセアン諸国への生産移管が進んでいたこともあり、現時点では中国の縫製工場も製造に対応できているようだ。

 しかし、中国の人件費の上昇は今後も続くと思われること、産業構造の高度化を求める中国において縫製業は産業の中心とはならないと思われることより、やはりアセアン諸国、及びアセアン近隣諸国での縫製拠点の確立は不可欠であると考える。アパレル各社の今後の海外生産戦略に注目したい。(執筆者:日本経営管理教育協会・三好康司氏 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(写真は、1996年中国の縫製工場。日本経営管理教育協会が提供)