現在、日本を始めとする工業先進国では、人間に変わる製造ロボットの研究開発、導入が積極的に進められている。中国でも同様の動きが見られるが、同時にロボットとは一見対極にありそうな「人間によるものづくり」の強化も声高に叫ばれている。それはまさに「匠の精神」と呼ばれているものだ。

 中国メディア・今日頭条は18日、日本を代表するものづくり企業・トヨタの工場で具現化されている「匠の精神」について紹介する記事を掲載した。

 記事はまず、「中国の匠はいったいどこにいるのか」と疑問を提起。中国が「匠の精神」を語るならば、その失われた中身を民間の中から探し出さなければならないとした。そのうえで、トヨタの北九州工場にある、鏡面の光沢を出す専門の作業場で、入社から半世紀近くが経過するベテランの技士が両手を使って繰り返し磨きをかけている様子を紹介。一点の曇りも良しとしない技士の仕事ぶりを「大工場のなかの小さな匠」と表現したうえで、彼らの精神の核となる部分について分析している。

 外的な要因としては、日本の地理的環境や文化的な特質が大きく関係していると説明。精緻な生活、責任を負う姿勢が、大企業における匠の精神の源となっており、「われわれが学ばなければならない点でもある」と指摘した。

 また、内的な要因として、トヨタが戦後に民間自動車の生産を開始した当初、資源や資金が不足する困難との戦いであった点を挙げた。財団から融資を受けて資金を調達し、注文を受けて生産するスタイルの中、当時の技術者たちは、細部まで丁寧に良い物を作らなければならないという切迫感を持ちながら仕事をしていたと論じた。その後、フォードの生産ラインを参考にした「トヨタ生産方式」が誕生するが、細かいところまでしっかり作る精神はすでに技術者たちに染み付いており、それが師弟関係を通じて作業場の中で代々受け継がれてきているのであると説明している。

 記事は、作業工程の全自動化ばかりを強調して「匠」の役割を否定しては、決して製品の品質は上がらないと指摘。「人の目や耳、鼻による感覚は、訓練を経ることによって、より細かな違いに気づくことができるようになる。そして、人による感覚を大切にすることが、クルマのオーナーを満足させる最良の方法なのである」としたうえで、「人は永遠に製品にとっての最後の砦である」という言葉に、トヨタの「匠の精神」が凝縮されており、国内の製造業が努力すべき方向性なのであると論じた。

 トンネルの安全性検査などでは、検査員がハンマーで叩いて微妙な音の変化を感じ取る。寿司職人は、熟練すれば手に掴んだシャリの重さが分かるようになる。そして、日常生活でも「なんとなくいつもと違うな」という感覚が事故やトラブルの発生を防ぐ、ということは結構あるものだ。

 人間の感覚は鍛えれば機械のセンサーに匹敵する、いやそれ以上の感度にまで高められるというのは、決して特別なことではない。問題なのは、その高みに持って行くまでの努力や忍耐ができるかどうかなのである。匠が匠と呼ばれる所以は、技術や感覚を究極的に高める努力を積み重ねてきたから。今の中国社会に求められているのは、その努力を温かく見守り、その成果を正当に評価するとともにリスペクトする姿勢なのだ。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)