日本経営管理教育協会が見る中国 第435回--坂本晃 

■高齢者問題の原点

 産業が今日のように発達する以前、農耕や狩猟が経済の中心であった時代は、親子で一緒に生活せざるをえない、家族中心の一生でした。当然に年老いた親の面倒はその子達が見ざるを得ませんでした。

 技術革新の結果、経済の中心は家族生活を中心とする農水産業から企業などが中心となる工業へ、さらには情報化社会へと進展してきました。家庭という生活の場とお金を稼ぐ仕事の場、工場とか事務所などが物理的、時間的に離れざるを得なくなり、職住分離の世の中になりました。

 その結果、高齢者と呼ばれる方々が、子どもが成人して、独立した家庭をもち別居した場合、高齢者のみの世帯になります。日本の世帯数は2014年現在およそ5千万世帯、そのうち65歳以上の高齢者がいる世帯は半分近く、さらにその半分ぐらいが65歳以上の高齢者のみの世帯となっています。

 日本の高齢者の8割は元気な高齢者ですが、2割弱の高齢者が介護保険を適応される要支援・要介護となっています。

■日本で介護は地域での方向へ

 その介護保険で受けられるサービスは、2000年に介護保険が施行される以前は行政による「措置」、税金で賄われていました。

 21世紀に入り、経済が成熟し、かってのように結婚して人生を作ることが困難になり、非婚化が進展、少子高齢化の時代は、高齢者の面倒を國が税金だけでまかなえなくなり、高齢者も保険料を払う介護保険が導入されました。

 保険ですから契約でサービスを購入するものです。現在は1割の自己負担金で、認定を受けられれば、所定のサービスを受けられます。その内容は、戦前などでは女中さんと呼ばれた方々が担当していた仕事が多いです。健康状態が悪くなり、経済的条件があえば特別養護老人ホームで面倒を見てもらえるようになる仕組みです。

 介護保険は保険事業ですから、収支の見直しが必要で、3年ごとに行うことになっています。今後増加が予定されている介護事業に対して、認知症予防など予防に力をいれると同時に、軽い支援は縮小、さらには地域包括支援センターなどを中心に地域の人々に、ボランティアを含めて担当してもらう方法へ進まざるを得ない現状でしょう。

■中国では「社区」制度での対応が今後のの方向

 中国も人類として共通の事情を抱えています。13億人という日本の10倍の人口をかかえ、過大な国営企業からの失業者の受入、一人っ子政策による歪みなど、地域がかかえる問題は日本以上とも言えそうです。

 中国で従来の「単位」、国営企業が一生の面倒、給与、住居、退職金、社会福祉などを見るという計画経済社会の仕組みが立ちゆかなくなり、単位保障から社会保障へと変化してきました。

 中国の都市行政の末端である「街道弁事処」の指導を受けた住民委員会、日本で言えば町内会に近い組織から、新しい「社区」という概念の組織を作りました。住民による選挙で選ばれた自治組織を誕生させ、社区住民の管理、教育、監督、サービスなどを担当させるものです。

 その中に高齢者の面倒をみるという仕事も含まれています。全国的に一斉に誕生させられたのではなく、大都市を中心にいくつかの「社区」が誕生し、活動を行っています。日本のマスコミでは、理解をさせるのが難しいためか、中国が紹介されるニュースなどで紹介された例を私は見たことがありません。

 中国では、医療、年金、介護いずれを取ってみても社会保障は日本に比べて不十分といえ、日本での経験も取り入れて欲しいものです。(写真は日本経営管理教育協会提供)