(257)我什么时候跳进你的园里来偷萝卜?

 阿Qが盗んだのは長大根か丸大根かはさておくとして,わたくしは丸大根だと思いますがね,しつこいかな(笑)。ふところにねじこんだ大根を指さして年とった尼さんからなじられた阿Qの居直りぶりが面白いので,ちょっと見ておきましょう。逃げながら振り向いて,阿Qは言います。

 我什么时候跳进你的园里来偷萝卜?(いつおいらがおまえさんの畑に跳び込んで大根を盗んだ?)

 尼さんが阿Qのふところを指して言います。现在……这是不是?(たった今,……それがそうでしょ?)

(258)你能叫得他答应你么?

 面白いのは問いつめられた阿Qの,次の捨てぜりふです。

 这是你的?你能叫得他答应你么?你……(これがおまえさんのだって?おまえさんこれに返事させることができるかい?おまえさん……)

 自分のものだというなら,呼んでそうだと答えさせてみろ,というのですね。完全にやくざかちんぴらのせりふです。似たようなせりふには,中国の映画やドラマでよく出会います。小説にも何度か出てきたような気がしますが,作品名を思い出せません。

(259)“一匹黑狗”ヘンでは?

 しまいまで言わずに,阿Qはぱっと逃げだします。一匹の大きな黒い犬が追ってきたのです。あわや足にかみつかれそうになった時に,大根がふところから落ち,驚いた犬が立ち止まったことは先に見たとおりです。ところで,この「一匹の大きな黒い犬」,原文では“一匹很肥大的黑狗”と書かれています。“一匹黑狗”,ヘンだと思いませんか。入門の授業で,“匹”はもっぱら馬に用いる助数詞で,犬には“条”を用いると習ったはずです。魯迅が犬のほか,からすやらすずめやらねずみやら……,じつにさまざまな動物に“匹”を用いているという話は,いつかしましたね。まるで日本語です。実際,日本語の影響を受けたのではないかと指摘されることが多いようですが,はたしてそうでしょうか。

(260)魯迅と日本語

 いくら留学経験があり日本語に堪能であったと言っても,魯迅ほど頑固というか強烈な個性の持ち主がやすやすと日本語の影響を受けるとは考えられません。考えられるとすれば,それは知らず知らずに染まってしまったというようなものではなく,意図的に取り入れたと見たほうがよい性質のもののように思われます。魯迅が日本語から取り入れたと思われる語彙や語法は随所に見られますが,それらはこのような視点から考察すべきもののように思われます。

 議論は暫くおくとして,試験の答案に“一匹狗”と書いたとしたら,やはり誤答として処理されるでしょうね。いくら魯迅先生も使っていますと言い張ってみても取り合ってはもらえないでしょう。それは「言語同断」と書いて,漱石が使っていますと言っても通用しないのと同じことでしょう。(執筆者:上野惠司 編集担当:サーチナ編集部)(イメージ写真提供:123RF)