「日本の街にはチリひとつ落ちていない」、「日本にはゴミ箱がない」などといった日本の清潔ぶりを賞賛する文章がエンドレスで出回っている感のある中国のネット上において、先日羽田空港の美観を守る「カリスマ清掃員」の話題が盛り上がりを見せた。しばらく前に日本のテレビで紹介された話だが、この女性清掃員が中国残留孤児を親に持ち、17歳まで中国に住んでいたという経歴の持ち主であるゆえ、多くの中国人が注目したようだ。

 この話題に関する評論も後を絶たない状況だ。中国メディア・中国民航網も18日、「われわれの空港にはどうして『新津春子』がいないのか」と題した評論記事を掲載した。記事は、昨今中国で俄に注目を浴びた羽田空港の清掃員・新津春子さんの経歴や仕事ぶりを「匠の精神」という今やお馴染みの言葉で紹介したうえで、「自ずと、わが国の民間航空業界のどこに新津さんのような人がいるのか、と考えてしまう」と問題提起している。

 そして、中国には各種の「先進」、「模範」、「サービスの星」といった称号を獲得する人がいるものの「新津さんと比べて大きな差があることは否めない」と指摘。そこには、「匠の精神」の不足、さらには「匠」を育てる環境、ムードの欠如という理由が存在するのだと論じた。また、日本では「人間国宝」に代表される様々な称号の制度が存在して精神的な奨励が図られるのに加え、資金的な奨励の制度も存在するゆえに、優れた技術や芸能が伝承され、大いに発展するのであるとも解説している。

 そのうえで、中国の民間航空業界が世界一流となるためにも「匠」が必要であり、業界内における「匠の精神」文化を提唱して、有能な技術者に対するリスペクトと同時に物的な奨励を行う必要があるとした。また、管理者への報酬を重んじる傾向にある現状に対して「質を担保する一番大事な人物は末端の労働者である」とし、考えを見直すべきであることについても言及した。

 中国で「匠の精神」を育てるにはどうしたらいいか。現在同国内において大いに議論が繰り広げられているテーマである。しかしその答えは案外シンプルなのかもしれない。すなわち、記事が指摘するように「優れた技術者に対する精神的なリスペクトと、物的・金銭的なインセンティブ」の仕組みをちゃんと作り、技術者や技術を高めようとする人びとのモチベーションを高めることだ。今の中国、「先進」、「模範労働者」という称号だけで「すごい、憧れる」と思われたり、「よし、もっとがんばろう」と思ったりすることはもはや難しいのだ。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)