(225)短见是万万寻不得的

 呉媽(ウーマー)の手を引いて女中部屋から現れた“少奶奶”若奥様:

 你到外面来,・・・不要躲在自己房里想・・・(あんた外へ出ておいで,・・・部屋にこもってあれこれ考え込んでいないで・・・)
続いて隣家の鄒七嫂(ツォウチーサオ):

 谁不知道你正经,・・・短见是万万寻不得的。(おまえがまともな女だってことは誰もが知ってるんだから,・・・短気なんか決して起こすんじゃないよ。)
「短気」と訳した“短见”,多くは「自殺」の意味で使われる。早まった考え,あさはかな了見。“寻短见”で「(思いつめて)自殺する」。

(226)闹着什么玩意儿了?

 呉媽は泣くばかりで,時々何か言っているが,はっきりとは聞き取れない。

 阿Qは思った:
  哼,有趣,这小孤孀不知道闹着什么玩意儿了?(ふん,おもしれえや,この若後家,何を騒ぎ立てていやがるんだ。)

 彼が歩みよっていくと,突然,秀才の若旦那が彼の方に向かってくるのが見えた。その手には例の天秤棒が握られている。

 その天秤棒を見て,阿Qはふと,自分がさきほど打たれたことと,この場の騒ぎとに関係がありそうだということに気づいた。

(227)你的妈妈的

 阿Qは身を翻して逃げ出し,米つき場へ戻ろうとしたが,あいにくこの天秤棒が行く手を阻んだので,またもや身を翻して裏門を通り抜け,やがてねぐらの土地廟にたどりついた。

 春の末とはいえ,夜は冷える。彼は上着を趙家に残してきたことを思い出した。だが,取り戻しに行くには秀才の天秤棒がこわい。そこへ地(ティ)保(パオ)(隣組の組長)がやってきた。

 阿Q,你的妈妈的!你连赵家的用人都调戏起来,简直是造反。害得我晚上没有觉睡,你的妈妈的!(阿Q,このろくでなし!趙家の女中にまでちょっかいを出しやがって,謀反(むほん)ものだぞ。おかげでこの俺まで夜も寝られやしねぇ,ろくでなしめが!・・・)

(228)简直是造反!

 「ろくでなし」と訳した“你的妈妈的”は,魯迅が他の箇所で「国罵」(国を代表する罵りことば)と称した“他妈的”と同類の語。原義はおまえのおっかさんをどうとかという卑猥(ひわい)なことばであるが,原義を離れて,「こん畜生」くらいの意味で今日も頻繁に使われる。

 「謀反」と訳した“造反”は,文革中に“造反有理”なるスローガンで一躍有名になったが,宋元の頃からすでに使われている。

 さて,地保からなんのかのと説教をくわされたが,もちろん阿Qは何も言えない。

 あげく,夜のことでもあり,倍額の四百文の酒手をふんだくられる。文(もん)無しの阿Qはふだんかぶっていた“毡帽”(フェルトの帽子)をかたに差し出したうえ,次の五つの条件を取り決めた。(執筆者:上野惠司 編集担当:大平祥雲)(イメージ写真提供:123RF)