中国政府外交部の洪磊報道官は10日の定例記者会見で、日本がフィリピンに自衛隊機5機を貸し出すことについて、「われわれは日本側に、言動を慎むよう促す」と述べた。王毅外交部部長(外相)も8日に「日本は絶え間なく中国に面倒を与え続けている」と発言するなど、中国政府は日本の外交攻勢にいらだちを強めている。

 日本は自衛隊保有のTC-90練習機5機をフィリピンに貸し出す。フィリピン海軍は借り受けた5機を、南シナ海のパトロール任務などに投入する。アキノ大統領も9日、空軍司令官の交代式で、自衛隊機借り受けを明言した。ただし、時期については明らかにしなかった。

 洪報道官は10日の記者会見で、中国も同問題に関連する報道に注目していると説明。「もしもフィリピンの関連行動が中国の主権、安全と利益を挑発するものであるなら、中国側は強く反対する」と述べた。

 洪報道官はさらに、「この場を借りて、改めて申し上げる。日本な南シナ海に関連する争議の当事者ではない。われわれは日本の行動に強い警戒を持ち続けている。われわれは日本に言動を慎み、情勢を複雑化せず、地域の平和と安定を損ねることをしなうよう促す」と述べた。

 日本が南シナ海の問題を始めとして、中国に対して外交攻勢をかけていることに、中国政府はいらだちを強めている。王外相も8日に開催された全国人民代表大会(全人代)にともなう記者会見で、「日本政府と指導者は、中日関係を改善する必要があると絶えず言いながら、いたるところで中国に絶え間なく面倒を与え続けている」と日本を批判した。

 王外相はさらに「中国の発展を目の当たりにして、結局のところ中国を友とするのか敵とするのか」と述べた。

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◆解説◆
 王外相の最後の「友とするのか敵とするのか」との表現は、日中関係に詳しい中国人ならば、蒋介石が自らの対日観を示したとされる(署名は別人)「敵か? 友か? 中日関係の検討(反省)」を思い起こすはずはずだ(1934年発表)。

 同論文は日中が全面戦争に突入した1937年の盧溝橋事件の前に、「中国は弱いがゆえに、決戦により戦争が終わることはなく、日本が中国全土を占領し、中国を徹底的に消滅し尽くさない限り、戦争終結はない」と指摘。日本側の対中観には多くの誤りがあると指摘した上で、中国側の日本認識にも間違いが多かったと認めた。そして日中間の問題を解決するには最終的に「必要なことは、ただ日本の考え方の転換だけだ」と結論を出した。王外相は、この部分を踏まえて発言した可能性が高い。

 「敵か? 友か?」は、中国を愛するがゆえに日本との戦争を避けたい信条がつづられており、「理を知る中国人はすべて、究極的には日本人を敵としてはならないということを知っているし、中国は日本と手を携える必要があることを知っている」などの記述がある。そのため現在の中国では「対日妥協論」などとして、批判されることも多い。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:(C)Mykhaylo Palinchak/123RF.COM)