これまで中国経済を大きく牽引してきたのが、外需と投資だった。しかし、世界的に経済が落ち込めば、外需は大きく後退する。一方の投資だが、景気の悪化などで「回収の目途が立たない」事態になれば、投資は冷え込む。その象徴として、600万ドル(約7億1280万円)相当を投じて建設したが、1日の利用者が6人しかいない空港がある。

 遼寧半島の南沖の島にある長海大長山島空港は長さ850メートルの滑走路が1本あるだけと、規模の小さなローカル空港だ。それでも、中国メディアの参考消息によると、建設のために600万ドルが投じられたという。現在のところ、利用者は1日にわずか6人。通常の手法で投資が回収できるとは、とても思えない。

 参考消息は、上海市にも「役立っていない大規模施設」が複数あると紹介した。その1つが同市浦東新区の「五角世貿商城」だ。2010年の上海万博と同時期に、約2億ドルを投じて建設されたという。外観や規模は、米国防総省のペンタゴンにそっくりだ。ちなみに中国では「ペンタゴン」が「五角大楼」と呼ばれるので、呼称も「もじり」ということになる。

 テナント出店を当て込んだ商業施設だが、入居状況は惨憺たるもの。使われていないエスカレーターの手すりにはほこりがつもり、建物内で客の姿は稀という。広大な屋外駐車場に停められている自動車はわずか数台だ。

 同施設が「最後の頼みの綱」としているのは、8キロメートルほど離れた場所にあり、2016年夏に開業が予定される上海ディズニーランドという。

 記事によると、浦東新区にあるテーマパークの「荷蘭風情小鎮(オランダ風情タウン)」や英国ロンドンの街並みを模した松江区の「泰晤士小鎮(テムズ・タウン)」も悲惨な状況だ。

 飲食店や娯楽スポットについてネットユーザーが点数をつけて感想を書き込む「大衆点評」を見ると、「平日に行ったが、人はほとんどいなかった。景色はすばらしい。天気がよかったからかな」と、落ち着いて過ごせたことを評価する書き込みがある。満足したが、「人がいなかった」とまで書かれたのでは観光スポットとして成功しているとは言い難い。他にも「寂寞としていた。商店は開いていない」などの書き込みが並ぶ。「混んでいた」との報告は皆無で、掲載された写真に人が全く写っていないのも印象的だ。

 中国では、内モンゴル自治区オルドス市のように、新しい市中心部を作ったが「鬼城(ゴーストタウン)」になってしまったケースもかなりある。過去の高度成長期のように、「開発すれば何とかなる」、「出遅れると先行者利益がなくなる」といった状況ではなくなった。不動産開発やそれ以外の分野でも、投資に慎重にならざるをえないのは明らかだ。

 李克強首相は2013年の就任前から、中国経済には内需拡大のための大胆な構造改革が必要と痛感していたとされる。大胆な改革策を推進してきたのは事実で、成果も出てはいる。しかし、改革には必ず「痛み」がともなう。今の中国経済に、「痛みに耐えられるだけの体力」がどれだけ残っているのか。そのあたりが問題だ。

 もしかしたら、中国経済の減速は、李首相が想定していたのより、かなり早く本格化してしまったのかもしれない。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:(C)郭輝/123RF.COM。上海市内のテムズ・タウン)