中国メディア・大手ポータルサイトの新浪網は19日、「42年前の中国の南シナ海での第1戦を回顧。剣を振り下ろしたことで今日の基礎を築いた」と題する動画ニュースを配信した。

 ニュースは、中国が軍事力を用いて南ベトナム軍をパラセル諸島(西沙諸島)から完全に駆逐した戦争は、42年前の1974年1月19日の開戦と紹介。戦争のきっかけは、中国の漁業会社に所属する漁民が西沙諸島の甘泉島(ロバート島)に上陸して、中国国旗と「中華人民共和国の領土を侵犯することは許さない」と書かれた木碑を建てたことと説明。

 「再現ビデオ」と見られる動画には、島の砂浜に成人男性2人と女児1人が小さな舟でやってきて、引き上げる様子が映されている。

 なお、上記主張のように中国の民間人が甘泉島に上陸して、「愛国的主張」の国旗と木碑を建てたとしても、「自発的意思」だったとは思えない。1974年は文化大革命期で、中国では政治や場合によっては軍も指揮系統も混乱していたが、事実とすれば漁民の上陸は何らかの形で上層部の意志の反映と考えるのが自然だ。

 動画はさらに、ベトナムの軍艦が15日に甘泉島に「侵入」し、「中国人漁民が、作業拠点にしていた甘泉島に砲弾10発を撃ち込み、道理もわきまえず退去を要求」と紹介。10日の「中国漁民上陸」と15日の「漁業の作業拠点にしていた」とのつながりの脈絡は不明だ。

 動画は、同事態を受けてトウ小平など中国の首脳部が開戦を決意したと紹介。双方の軍艦が西沙諸島海域で対峙したと解説した。さらに、ベトナム軍部隊が19日に同諸島広金島に上陸を試みたが、中国側の民兵に撃退されたと紹介。同部分は以前に制作された映画またはテレビドラマの画面を流用したと思われる。

 上陸を試みるベトナム部隊の数十人は小銃などを持ってはいるが、やや後方のゴムボートが進むでもなく退くでもなく、兵士を乗せたままのんびりと漂っている。中国の「民兵」とされる若い女性3人が身を隠すでもなく立ち上がって小銃で射撃するとベトナム軍部隊が反撃もせず逃げて行く光景も印象的だ。

 動画は同海域で中国とベトナムが海戦を行い、中国側がベトナムの軍艦を次々に撃沈する様子や、中国軍が上陸する様子を紹介。いずれも古い作品からの流用と考えられる。

 同戦争が始まる前、西沙諸島の東部分の島は中国が、西部分の島はベトナムが実効支配していた。動画は同戦争によって、「中国は西沙諸島におけるすべての主権を回復した」と主張した。

 動画は最後の部分で、中国が2015年に埋め立て作業を行い滑走路を建設したスプラトリー諸島(南沙諸島)のジョンソン南礁(赤瓜礁)の画像を紹介。さらに、中国が南シナ海で支配を進めている背後には「42年前に戦った将兵の敢闘精神がある」などと主張し、最後の部分で中国国旗を大きく映した。

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◆解説◆
 日本でも、自国がかかわった過去の戦争を題材とする映像作品が制作・公開されることがある。ただし日本の場合には、自国の行為を賛美する作品も批判する作品も存在する。戦争そのものを批判する作品も多い。

 中国の場合、清朝末期や中華民国期の戦争について、自国側の腐敗や無能ぶりを紹介する作品はあっても、共産党軍あるいは人民解放軍を批判・非難する作品は存在しない。日本人の場合、自国がかかわった戦争について、さまざまな立場にの作品に触れることで、改めて自分で考える機会を得られやすいのに対して、中国人の場合、少なくとも自国の作品に接するだけでは、さまざまな立場で客観的に考える訓練がなされる機会は乏しいと言える。(編集担当:如月隼人)(写真は新浪網の19日付報道の画面キャプチャー)(写真は新浪網の19日付報道の画面キャプチャー)