中国企業は使いやすいボールペンを造れないのだろうか――。中国の李克強首相はある企業家にこう問い訊ねたという。中国メディアの中国質量新聞網は12日、有人宇宙船や高速鉄道を製造できる中国がなぜ「使いやすいボールペン」を造れないのかという問いを提起、その原因を分析している。

 記事はその答えとして、材料や技術レベルやイノベーションに問題があるのではなく、中国人に「職人精神」が欠けていることに問題があると指摘している。技術に対してではなく、人に問題があるということだ。では「職人精神」とは何だろうか。興味深い点だが、日本の「ものづくり精神」とは少し異なるようだ。

 続けて、高品質製品を造ることで名高いドイツの職人精神に注目し、「ドイツ企業にとって利潤の最大化は重要ではなく、重要なのは与えられた天職に邁進することである」とドイツの大手企業の役員が述べたというコメントを紹介。この考え方はドイツの社会学者マックス・ウェーバーを思い起こさせる。

 マックス・ウェーバーは仕事に貴賤はなく、重要なのは神から与えられた天職に邁進することだと考えた。例えば書きやすいボールペンのペン先の開発に時間がかかろうとも、大きな利潤が得られないとしても天職であればそれに打ち込む。記事はこうした思想がドイツの職人精神を形作っていると指摘している。

 ドイツの職人精神はさまざまな製品に反映されている。例えばドイツ人にとってドイツ製の料理道具は高品質であるため「一生に一度だけ」買うものであり、買い替える必要がほとんどない。鍋に至っては100年以上使用できるため、ドイツ人の多くが祖母から受け継いでいるものを使っていると紹介している。

 一方、中国企業の多くにとって重要なのはできるだけ早く、できるだけ大きな利潤を得ることだ。たった一度の自分の人生を大きな利潤が得られない商品の開発のために浪費したくない。だから誰も腰をすえて「ペン先の開発」に携わろうとしない。書きやすいボールペンを造り出すための原動力や誘因が中国にはないのだ。

 では中国が書きやすいボールペンを造り出すためにドイツ人の宗教観を持つことが必要なのだろうか。そうではないと言える。なぜなら高品質製品を生み出す日本のものづくり精神は宗教性のないものだからだ。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)