中国は「ニセ札大国」。ATMから出てきたお金がニセ札だったり、巨額のニセ札を生産していたアジトが摘発されたりといったニュースが今も後を絶たない。ニセ札の製造や使用はもちろん犯罪だが、一方で市場に堂々と出回っている合法的な「ニセモノのお札」が大量に存在する。それは、燃やすことで「あの世」に送るための「冥幣」だ。

 中国メディア・澎湃は25日、「冥幣」を主力製品として扱う広東省の翊翔民俗文化股フェン有限公司が24日、中国の中小企業向け店頭取引市場「新三板」に上場を申請したことを報じた。記事によると、同社は紙を原料とした造形品を製造する会社として2009年に設立され、現在は約200種類あまりあるという「冥幣」を主力製品として、おもにシンガポールやマレーシア、香港の華人コミュニティ向けに輸出販売を行っているとのこと。同社がある同省汕頭市蓮下鎮は清朝末期より「冥幣」の生産が盛んなのだそうだ。

 会社を経営するのは高卒の夫婦で、「冥幣」について十数年の研究経験があるとか。中国人や外国の華僑に「冥幣」を燃やす習慣があるとはいえ、それを主力製品として会社の経営が成り立つのか、と疑問に思ってしまう。しかしその疑問は、同社の営業収入を見ることで一気に吹き飛ぶのだ。2014年の営業収入は3757万人民元(約6億9800万円)で、今年は1-9月までのトータルですでに4000万元(約7億4300万円)に迫る営業収入を得ている、と記事は伝えている。

 同社はさらに、今後の発展にかんするビジョンもしっかり持っているようだ。記事は、今後葬祭用品のラインナップを増やすと同時に、結婚などの慶事にかんする製品も手掛ける予定であること、さらに、中国が国家戦略として掲げた「インターネット+」の波に乗り、インターネットを利用して民俗文化やマナーの普及、現代的要素を加えた関連コンテンツを開発する構想を持っていることを併せて紹介した。

 もちろん地域や宗教によって異なるという前提があっての話だが、一般的に「三途の川の六文銭」程度の習慣しか持たない日本人にとって、冥銭が立派なビジネスの武器になるというのはいささか驚きであり、中国や華僑の「冥幣」文化の深さを感じざるを得ない。

 仏教に基づく日本の風習では「三途の川の渡し賃さえあれば、無事川を渡ることができる」とされる。その先は「生まれ変わる」、あるいは「あの世で暮らす」など、さまざまな思想が入り混じって来るが、いずれにせよ死んでしまえば「お金」とは無関係になる。一方、中国に根付く死生観では「あの世」と「この世」は表裏一体。この世の人間があの世の先祖に「仕送り」をすることで、ようやく先祖は「あの世」で安らかな暮らしを手に入れることができるのだ。だからこそ、「冥幣」でビジネスが成り立つのである。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)