資本主義を容認しなかった。市場原理の導入を断じて許さなかった。そんな毛沢東が、自らの書簡がオークションで90万ドル(約1億956万円)で落札されたのを知ったら、草葉の陰でどう思うだろう。

 書簡の日付は1937年11月1日で、共産党が本拠地としていた陝西省の延安で書かれたとされる。英労働党党首のクレメント―・アトリー氏に宛てた。アトリー氏は1945年7月26日から1951年10月26日まで英国首相を務めた人物でもある。

 中国語で書かれた手紙を、延安で中国共産党を取材していたニュージーランド人記者のジェームズ・バートラム氏が英文に翻訳したとされる。漢字とローマ字による毛沢東主席と共産党軍の総司令だった朱徳将軍の署名がある。

 文面は、共産党の境遇について、侵略者である日本と「生死を賭けた戦い」をしていると説明し、英国労働党と英国人民に実際敵な支援を求めている。

 手紙を保有していたのはアトリー氏の息子の夫人とされている。英競売会社のサザビーズが5日、オークションにかけると発表した。中国メディアの環球網によると、当初は12万-18万ドルでの落札と見られていたが、予想をはるかに超えて値がつりあがった。

 1937年当時の毛沢東は日本との戦いについて「持久戦に持ち込めば、日本はいずれ撤退せざるをえない」と信じていたようだが、その後の国共内戦に勝ち抜き、「自分の目の黒いうち」に国民党を完全に排除した政権を樹立できるとまで考えていたかどうかは疑わしい。

 中国全国のトップに上り詰め、世界に大きな影響を与える人物になったからこそ、90万ドルの値がついたと言えるだろう。毛沢東は大の読書家だったが、特に歴史書に通暁していたと言える。自分も中国史だけでなく世界史に名を残したことには、大いに満足ではないだろうか。

 なお、毛沢東の手紙を競り落としたのは中国人の個人収集家とされている。オークションと言えば、典型的な「資本主義・市場原理」による経済行為と言える。資本主義、帝国主義の徹底排除こそ、新しい中国の進む道との毛沢東は、草葉の陰でどう思っているだろう。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)