黒龍江省・五常市に住む雲少君さんは59歳の男性だ。10月10日に転倒して、腰骨を骨折した。病院手術を受けたが、請求書を見て驚いた。病院側が当初説明した費用の見積もりより大幅に高額だった。それだけではない。明細を見ると「子宮摘出術」、「子宮外妊娠のための輸卵管切除術」など、“身に覚えがあるはずのない”項目が並んでいた。

 雲さんは、最初に運ばれた病院の勧めに従って、設備もスタッフも整った省内屈指の病院である黒龍江省医院に転院して手術を受けた。医者は、「治療費は3万元(約57万5000円)あまり」と説明した。中国では社会保険が発達していない。多くの場合、医療費はすべて“自腹”だ。雲さん一家は親類や友人から借金をして、3万5000元を病院に支払った。

 手術は10月13日だった。手術後に医師は「非常に上手くいきました」と説明したという。16日になり、看護師が雲さんの娘に告げた。費用が1万元ほど足りないという。雲さん一家は支払えなかった。すると17日に、未払いということで投薬を止められた。

 雲さん側は、治療費の明細を求めた。届けられた請求書を見ると、総額は4万6286.54元だった。驚いたのは金額だけではない。「開腹子宮摘出術」、「卵巣嚢胞削除術(片側)」、「子宮外妊娠に伴う輸卵管切除術」など、婦人科の手術名が並んでいたからだ。

 おかしいと医師に話すと、手術室のミスだろうと言われた。手術室に言って居合わせた別の医師に言うと、「調べてあげましょう」と言い、明細書を持って立ち去った。しばらくして「新しい明細書」を持ってきた。金額は4万986.9元で、5000元あまり少なくなっていた。素人にも「婦人科」と分かる手術名は残っていたが、金額はすべて「0元」になっていた。その他にも13項目が「0元」になっていた。

 20日になって、看護師が再び「不足分」を請求した。雲さん側は改めて借金をして用意した2000元を支払った。本来ならば入院を続けねばならないが、雲さん一家には支払い能力がないので21日に退院した。

 雲さん一家は大きな不満を持った。まず、病院から謝罪の言葉が一切なかったことだ。最終的な明細書も、信用できない。

 そこで11月9日に、雲さんの娘らが黒龍江医院医務部に足を運んだ。医務部の責任者は明細書を見て「こういうことは、だれでもいやですからね。急いで調査しますよ。書面で(調査を)要求することもできます」と述べた。

 しかし18日午前になっても、病院から連絡がない。同病院医務部は「苦情があったことは事実です。書面で要求するように伝えたのですが、(書面での)明確な要求がないのです」と説明した。

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◆解説◆
 中国では「医療に対する信頼」も低下している。負担が大きいので、「金額に見合う治療をしてくれているのか」と猜疑心が芽生えやすいという背景もあるだろう。治療を受けた患者が死亡した場合などでは、恨んだ家族が医師を殺傷する事件も、しばしば発生している。

 医療業界側にも「偽医師を雇った偽病院」といった事件が発生するなど、問題は根深い。中国政府は「医療紛糾の予防と処理のための条例」の制定のための作業を続けている。「条例」といっても現在の日本とは異なり、全国を適用範囲とする法律だ。

 同条例には、医療機関側の記録改竄(かいざん)や隠匿を禁止する条文が盛り込まれている。つまり、医療機関側の不正を抑制するために特化された法律が必要な状態と考えてよい。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)