中国漁船数百隻がベトナム漁船5隻を襲撃した模様だ。環球時報がベトナムでの報道を引用して伝えた。ベトナムでは漁網30網以上が引きちぎられ、「過去30年来、最悪の事態」と報じられているという。

 ベトナム漁船の船長が16日、ダナン市ソンチャー区の自国当局に報告したことで明らかになったという。船長によると8日に出港して、仲間の船との計5隻でトンキン湾で操業していた。トンキン湾はベトナムと中国の広西チワン族自治区、海南省(海南島)など囲まれた海域だ。

 船長は、14日午前2時ごろ、「無数の中国漁船が突然出現し、蜂のように押し寄せてきた」と説明したという。記事は、ベトナム漁船を襲撃した中国漁船は「数百隻」だったと伝えた。

 中国漁船はベトナム漁船が漁網を投じていた水面に次々に突入。30網程度が引きちぎられたという。ベトナム当局関係者は「中国漁船がベトナムの領海に進入したかどうかを確認する」と述べたという。

 以前にも中国とベトナムの漁船が海上で「抗争」することはあったが、最近では少なくなっていた。中国政府・外交部の華春瑩報道官は、「海上で問題が出たことはあったが2014年以来、双方は問題を妥当に処理し、密接な意思疎通を保っている」と説明していた。

 中国社会科学院の研究室主任で東南アジア研究の専門家である許利平主任は、「仮に、(権益関連の)境界線が定まっていない『グレー・ゾーン』で操業する場合には、双方が協力の気持ちを持たねばならない。相手を一方的に批判するのはフェアでない」と述べた。

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◆解説◆
 同件について、ベトナムのメディアが言及した「過去30年来」とは、「1985年以来」ということになる。

 中国とベトナムの軍事衝突と言えば、1979年に中国軍がベトナム領内に攻め込んで撤退した中越戦争がよく知られるが、1984年にも、ベトナム軍が国境地帯に築いていた陣地を中国軍が奪取しようとして発生した「中越国境紛争」が発生している。中国軍が火力を集中させ、ベトナム側は白兵戦で応じる凄惨な戦いとなった。中国軍は陣地を奪取した。中国軍の戦死者は約1000人、ベトナム軍は4000人程度との見方がある。

 14日未明の海上での衝突をベトナムのメディアは、大量の死者が出た中越国境紛争以来の事態と表現したことになる。

 なお、中越双方は1988年ごろから、関係改善を模索しはじめた。中国軍は1989年5月までに、中越国境紛争で奪取した高地2カ所から撤退した。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:CNSPHOTO。ベトナムとの国境に近い北海市の漁港に集結した中国漁船)