中国北部の都市部では「暖気(ノワンチー)」と呼ばれる集中暖房システムが導入されている。しかし旧式の石炭ボイラーを用いた暖房システムは大気汚染の大きな原因になり、現在はガス燃焼ボイラーなどへの転換が進められている。

 世界で初めて、全国の都市部における集中暖房を導入したのはソ連だった。1930年代には本格着手。ボイラーで熱水を作りパイプを通じて各部屋に置かれた熱交換器に通し、冷えた水を再びボイラーに戻す方法だ。

 「住民に平等に暖かさを」の政策は、社会主義本来の理念と“相性”がよかった。また、社会全体として石炭資源を節約できるという長所も大きかった。大企業などの場合、企業が敷地内の建物すべてに熱を供給する「暖気」の設備を導入した。

 中華人民共和国は建国直後の1950年代から、「暖気」と呼ばれる集中暖房の導入を積極的に行った。ただし中国の場合、温暖な南部にまで暖房は必要ないとの考えで、国土をおおむね南北に2分し、北側地域及び高山地帯であるチベット自治区などを「暖気導入」の対象地とした。

 そのため、冬になると「暖気」設備のある北京の建物内の方が、「暖気」のない上海の建物内より暖かいという「ねじれ現象」も発生したが、「暖気」の制度は中国で定着したと言ってよい。

 しかし最近になり旧式の石炭ボイラーを用いる「暖気」が、大気汚染の大きな原因になることが問題になった。汚染物質は二酸化硫黄やPM2.5など微粒子を含む煤煙だ。

 11月1日に「供暖」が始まった遼寧省瀋陽市では、市政府環境部門の担当者が、市内各地の「暖気施設」で運営状況を検査した。

 現在の中国では「暖気」の運営組織も企業化されているが、地元紙の瀋陽晩報によると、検査した市内108社の熱供給企業のうち14社に排気放出について違反行為があったという。市側としては、「排出基準を満たさない旧態然としたケースがあれば処罰し、資料の改竄などがあれば、さらに厳しく法的責任を追究する」考えだ。

 一方、北京市ではすでに、「暖気」用施設の更新が進んでいる。市中心の6つの区については、すべてガス火力ボイラーにしたという。郊外の新興地区でも施設の更新は進められている。そのため、同市における二酸化硫黄の累計濃度は「供暖」が実施される中国北部では最も低く、「供暖」による大気汚染がない南部都市並みの水準という。

**********

◆解説◆
 中国で発生する大気汚染は周辺国にも及んでいる。日本としても、中国の「大気汚染源の追放」は歓迎したいところだ。

 しかし一方で、中国は石炭資源が豊富だが、天然ガスは多くを輸入に頼るという事情もある。現在は国際的に石油や天然ガスなど燃料価格が低い状態だが、今後価格が上昇し、中国でのガス使用量が大幅に増えれば、日本人1人ひとりにとっても負担増という影響がでる可能性は否定できない。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:CNSPHOTO。大気汚染で視界が低下した江西省南昌市の風景)