北京市のメディア「新京報」によると、北京市内で「売血」が盛んにおこなわれている。「血頭(シュエトウ)」と呼ばれるブローカーが売血希望者を募り、医療機関に血液を斡旋しているという。

 中国では1998年10月1日に献血法が施行された。同法の目的は、臨床用血液の需要と安全、献血者と輸血者の安全を保障し、人道主義を高揚することなどだ。「国家は無償献血制度を実行する」としており、無償献血についての条項が並ぶ。

 無償献血者を表彰することや「適切な補填」を行うことは認められている。一方で、医療機関が無償献血で入手した血液を売買することは禁止されている。

 さらに、手術に備えて患者自身が血液を採決して備蓄しておくことや、家庭、親友、職場、地域社会が「互助献血」をすることが推奨されている。

 新京報によると、「血頭」が利用するのは、献血法にある「互助献血」の規定だ。まず、インターネットや電柱に貼ったチラシなどで、「有償献血希望者」を募集する。インターネットでは「A型2人、O型3人。400cc当たりで400元(約7590円)などの書き込みを見ることができる。連絡先の携帯電話番号もある。

 集合場所に現れた「売血者」は、輸血用血液を必要とする患者の親族や友人ということにする。「血頭」は一同に、患者の氏名や状況などを覚えさせるという。採血場所は患者の入院先の病院などだ。

 新京報の覆面取材によると、「血頭」に支払いをしていたのは患者家族で、400ccあたり1800元(約3万4200円)だったという。

 北京市内の医療関係者によると、輸血用血液の不足は常態化している。特に夏と冬には深刻な状態になるという。そのため、患者周辺の「互助献血」は血液を確保するのに欠かせない手段で、当局の取り締まりにも関わらず「血頭」が横行する原因になっている。

 記事は北京市以外の状況には触れていないが、北京市の献血率は2014年実績で常住人口の1.94%で、全国のトップという。北京よりも献血率の低い各地で「売血」が盛んにおこなわれていることは、簡単に想像できる。

 なお、中国の献血法には売血についての条文が少ないが「違法に他人の売血行為を組織した場合」には罰金を科し、場合によっては刑事責任を追究すると定めている。

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◆解説◆
 「血頭」がほぼ金儲けだけを念頭に活動しているのは、売血者から血液を400元で“仕入れ”、4倍以上の1800元で販売していることからも明らかだろう。悪い冗談めいた表現になるが、「人の生き血を吸う」商売をしているわけだ。

 ただし、記事によれば中国における輸血用血液の不足を考えれば、「血頭」の存在によって命が助かった人もいると考えるのが自然だ。このあたりが、現代中国の抱える矛盾の深刻さと言える。

 中国河南省では1990年代、売血が原因で農村部でHIVの大量感染が発生したことがある。省政府が「有償献血」を推進したことが原因だった。日本で成分献血と呼ばれる、必要な血小板や血漿だけを採取し、赤血球は採血者の体に戻す方法を採用した。本来は体への負担が少ない方法だが、他人の血との分離をきちんと行わないという、非常識なほどに不衛生なやり方だったことが感染の原因になった。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)