中国・中央軍事委員会機関紙の解放軍報は28日付の1面で、「工作制度はさらに1歩、真に厳しくせねばならない」との見出しの記事を掲載した。同記事は、軍の指導者が中央軍事委員会主席、すなわち習近平主席と改めて強調した。中国では「常識」である制度を強調したことは、軍内部に指導体制に抵抗する勢力がある可能性を示唆するものと言ってよい。

 記事は、「党の軍に対する絶対的な指導は抽象的な原則要求ではない」、「(制度の)核心は、部隊の最高指導権と指揮権は党中央と中央軍事委員会に属することだ。中央軍事委員会は主席による責任制度を実施えいている」などと主張。軍に対する党と中央軍事委員会の指導と、中央軍事委員会主席が同委の責任者であることを繰り返し強調した。

 さらに、軍に対する絶対的指導体制を堅持するために、「高級指導幹部と指導機関の責任がさらに大きい。態度を特別に鮮明にせねばならない。断固として行動せねばならない」、「言葉(個人的発言)を持って法に代え、権力で法を曲げ、私情で法を曲げることは絶対に許されない。個人の権勢で紀律順守や法の執行を妨害することは、絶対に許されない」などと主張した。

 中華人民共和国憲法は、「中国共産党が国家を指導」や「中央軍事委員会が(人民解放軍など)全国の武装力を指導」、「中央軍事委員会は、主席責任制を実施」ことを明記している。さらに、中華人民共和国国防法は、同国の武装勢力は「中国共産党の指導を受ける」と明記している。

 上記は、中国では「ほぼ常識」だ。解放軍報が「当たり前」のことを繰り返し強調する文章を、しかも1面に掲載したことは、軍内に党執行部、つまり習近平体制に抵抗する勢力が存在し、体制側にとっても放置できない状況になっている可能性を示唆すると言ってよい。

 解放軍報の記事が「腐敗問題」に直接触れていないことも注目に値する。軍内部に腐敗や利権問題とは別に、習近平体制に批判的な勢力が存在する可能性がある。

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◆解説◆
 中国には2つの「中央軍事委員会」がある。ひとつは中国共産党中央軍事委員会で、もうひとつは国家中央軍事委員会だ。党中央軍事委員会の前身は1925年設立の中央軍事運動委員会。その後、中央軍事部、中央軍事科などと名称や組織は変更されたが、中国共産党の「核心的機関」として存在しつづけてきた。

 一方で、国家中央軍事委員会は1983年の発足。中国人民解放軍はもともと、国軍ではなく、中国共産党という政治勢力が持つ「私軍」だった。中華民国国軍との戦いに勝利して、国民党政権を「海外」である台湾に追いやることに成功したが、「国軍と公然と戦った」からには「反乱軍だった」と言ってもよい。

 1949年の中華人民共和国発足後、中国人民解放軍は「国防」の任務を担うことになったが、制度上は「国軍でなく共産党軍」との位置づけが残った。1983年の国家中央軍事委員会の設立は、「国軍としての人民解放軍」の方向性を打ち出したものとされる。

 ただし国家中央軍事委員会と国家中央軍事委員会は構成員が同じであり、実質的に同一の組織だ。そのため中国人民解放軍は現在も、「党軍」という性格が極めて強いと考えてよい。(編集担当:如月隼人)