見出しからして妙だった。「日本のステルス機に実戦能力なし。中国は日本をはるかにおいてきぼりにした」だった。日本が開発中のステルス研究機「ATD-X」の話だ。中国のインターネットメディア「環球網」が6日付で掲載した。一体何を主張したいのかといぶかしく思いながら、読み進んだ。

 「ATD-X」は「Advanced Technological Demonstrator-X(先進技術実証機-X)」の略だ。ステルス機の基本的特性を研究する性格上、平均的な戦闘機と比べ機体は大幅に小型で、エンジン推力も小さい。武器の搭載能力もない。

 環球網の記事は、防衛省の予算報告書でも同機を「技術実証のため」と位置づけていると紹介したが、「推進力が不足」、「機体内部に武器を取り付けるスペースはない」、「機首部分も小さすぎ、高効率のレーダーを取り付けられない」などと指摘し、「したがってATD-Xには基本的に、実戦能力がない」と結論づけた。

 一方で、中国が開発中のステルス戦闘機「殲-20(J-20)」については「最も早ければ2015年に訓練飛行を開始、17年には解放軍に配備、19年には初期段階となる兵力となる」、「中国はステルス戦闘機J-31も珠海航空ショーで展示し、各国へ売り込んだ」と説明。専門家の意見として「ステルス戦闘機開発の分野で、中国は日本をはるかにおいてきぼりにした」との考えを紹介した。

 なお、同記事は「ATD-Xのエンジンは石川島播磨が製造」、J-20については「ロシア製エンジンを搭載」と紹介した。

**********

◆解説◆
 性能や信頼性は別にして、「実戦配備を想定して開発中の戦闘機を飛ばせているか」という点だけに注目すれば、上記記事の「中国はステルス戦闘機の開発で、日本を引き離した」との主張も、あながち間違いではない。

 しかし、日本が当初から「ATD-X」は「実証機」と説明しているにもかかわらず、「戦闘能力はない」と繰り返す書き方には、違和感を感じざるをえない。

 このような書き方をした背景に、思い当らない点がないではない。まずは、中国における、日本の技術力に対する高い評価がある。そして、中国では自国製兵器の性能向上が強調されているが、「日本が先進技術を軍事面に本格的に投入すれば、自国の技術では太刀打ちできない」との恐怖感があると考えられる。

 つまり、日本の技術に対する高い評価と、自国の技術に対する「なかなか口には出せない自信のなさ」が反映された記事と考えられる。

 もうひとつは、日本の「言葉や態度」に対する不信感だ。中国人は「日本人は面と向かっては礼儀正しく、こちらを傷つけないような言動を示すが、陰に回ると全く違ったことを言う」と言う場合が多い。

 本人と対面した際と、いない場所での言動に違いが生じるのは中国人もそうは変わらないと思えるが、日本人の場合、対面した際の「礼儀ただしさ」が際立つだけに、「落差」を強く感じるのだとう。

 個人レベルだけでなく、靖国神社を参拝した首相が平和を口にしたり、過去の戦争について反省の弁を述べても、中国人は「日本人の言行の不一致」を強く感じる場合が多い。彼らが首相の靖国神社参拝を特に問題視するのは、いわゆる“A級戦犯”が合祀されているからだが、日本人の多くが自然にもつ「死者を悪く言うことは避けるべき」との感情は、中国人にとってやや理解が難しい。

 また知識人の中には、「日本は『陸海空軍その他の戦力を保持しない』と憲法で定めているにもかかわらず、事実上の戦力を持つ。しかも『軍』ではなく『自衛隊』と称している。これは典型的な日本人式の『二枚舌』」と主張する人もいる。(編集担当:如月隼人)(写真はイメージ:123RF)