台湾誌「観察」は12月発売号で、11月の29日で国民党に歴史的惨敗をもたらした馬英九総統を「消極怠惰」などと厳しく批判する記事を掲載した。同誌は大陸との関係では「協調論調」を唱えており、李登輝元総統、陳水扁前総統を批判する立場だが、馬総統を「新たな局面を全く作れず」などと批判した。環球網や中国網など中国大陸のインターネット媒体も同記事を転載した。

 記事は最初の部分で、李登輝元総統を「自らの権力固めのため本土化を高らかに唱え、人民に麻酔をかけた」などと批判。さらに、国民党は李登輝政権期に金権体質化し、道徳面でも腐敗したと断じた。台湾の「本土化」とは、「現在の中華民国にとって台湾こそが本土だ。中華民国は大陸部とはすでに切り離された存在」との考え方を指す。

 陳水扁政権についても、腐敗の傾向がさらに高まり、「李登輝式の本土化」に導かれ、「大陸の実力が急速に高まったことを無視したため、台湾はさらに両岸関係における主導権を失った。中国共産党の圧力をさらに受け、台湾に不利な現象が多く表面化。人々は大きな不安を感じた」と批判した。

 2008年に馬英九政権が誕生した際には、「国民党の腐敗イメージは(馬英九総統)個人の魅力で覆い隠された」と指摘。ただし、「資産家の遺産税引き下げや財界への大きな保護」を行い、しかも高級官僚の腐敗事件が発生しても、徹底的に対処しなかったなどで、多くの民衆が失望したと批判した。

 馬英九総統は(大陸との)両岸関係への貢献を「常に自慢する」とした上で「常態を回復しただけで、業績と呼べるのか? 不統・不独・不武(統一しない・独立しない・武力衝突しない)は消極怠惰であり、実際には李登輝式・陳水扁式の『本土化』の延長だ。新たな局面は全く作れなかった」と、厳しく批判した。

 記事は、国民党が今後目指す方向として「両岸関係の発展を通じて台湾の価値と実力を向上させること。それでこそ、最もすばらしく最も健全な『本土化』だ」と主張。

 さらに、「良好な社会主義政策を研究し、中小企業を改めて取り込み、大資本の財界人とは適切な距離を保つべき」と批評した。

 台湾では、総統に大きな権限が集中させている。任期は2期8年までであり、「1期目には次の選挙を考えて民意の動向を気にするが、2期目になると再選はないので、自らが望む政策を実現しようと暴走することがある」との指摘がある。

 記事は、「中華民国憲法は李登輝により、総統専制に修正された。本当の民主主義の原理原則に回帰した内容を盛り込むべきで、『勝者の総取り』は変更せねばならない」などと主張。二院制による責任内閣制の採用を訴えた。

 環球網や中国網など中国大陸のインターネット媒体も上記記事を転載した。

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◆解説◆
 李登輝元総統も、自らが手がけた台湾における民主化には限界があり、現在はそれを打破する必要があると訴えている。3月に大陸側とのサービス貿易協定を求めて学生らが立法院を長期にわたり占拠した際には、これまでの民主化を「第1次民主改革」として、「過度に集中している中央への権力の分散」、「台湾各地がすべて発展するメカニズムの構築」、「資源の公平な分配」、「各地の民衆が同レベルの基本的福祉を受けられるようにするなどの内容による「第2次民主改革」が必要と力説した。

 上記記事が主張した「『勝者の総取り』は変更せねばならない」は李元総統の主張と同一だが、記事は李元総統を厳しく批判する論調で紹介した。

 中国大陸のメディアは従来、馬英九総統の業績を強調する記事を多く流し続けた。「エールを送る」かの記事も前った。しかし3月から4月にかけての学生運動を期に、馬英九政権が抱える問題点を紹介する記事が増えだした。11月29日の統一地方選で馬英九主席(当時)が率いる国民党が惨敗すると、馬英九総統や政権の問題点を指摘する記事が、さらに増えた。

 台南市の頼清徳市長は9月に来日した際に行った講演で、台湾第2の野党の・親民党の宋楚瑜主席が5月に北京を訪問して中国共産党の習近平総書記(国家主席)と会談した際、習総書記は「国民党は事実と異なるメッセージを送ってきていた」と述べたという。

 習総書記は、台湾との間で実現を目指してきたサービス貿易協定の実現が阻止されることになった原因は、馬英九政権が事実とは異なる説明をしてきたために共産党側も対応を誤ったからだと、馬英九総統および同政権に対する不満と不信感を示したと解釈できる。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)