中国のインターネットメディアでは2014年になってから、中国が開発中の大型飛行艇「蛟龍600(JL-600)」が日本に圧力をかけるといった報道が続いている。最初は人民日報系の環球網が1月26日付で掲載したとみられるが、12月になっても人民日報系の人民網(広西チャンネル、重慶チャンネル。いずれも23日付)が同じ記事を転載するなどの現象が続いている。

 記事からは、日本の新明和工業(本社・兵庫県宝塚市)が開発した飛行艇の「US-2」への対抗心を強く感じる。「中国はこの機(JL-600)によって、日本の飛行艇US-2を一気に抜いて、世界最大の飛行艇製造国になる」などと紹介した。

 JL-600については「森林火災を消火する際には、20秒内に水1万2000キログラムを汲み、水源と火災現場を往復しながら水を投下できる」、「水難事故では、高度50メートルで安定飛行ができ、水面に停泊をして50人の救助が可能」などと紹介した。

 US-2についても高い能力を詳細に紹介して、「他国の生産する飛行艇に比べて相当に優勢だ」と評価したが、JL-600との比較はしなかった。

 記事は、2013年に安倍首相とインドのモディ首相がが東京で会談した際、US-2の対インド輸出で基本的に合意したことにも触れた。両首脳は11月に訪問先のオーストラリアで会談し、US-2のインドへの輸出について作業を加速することで合意した。

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◆解説◆
 現在生産されている大型飛行艇としては、US-2以外にカナダ・ボンバルディアのCL-415、ロシア・ベリエフのBe-200などがある。

 大型飛行艇は災害時の出動などが主な用途とされているため、重視されるのは大きさではなく、むしろ「極限状態における使用可能性」だ。例えばUS-2の場合、離着水が可能な最大の波高が3メートルで、CL-415の1.8メートル、Be-200の1.2メートルを大きく引き離している。つまり、US-2は外洋でも使いやすい飛行艇と言える。

 逆に、湖など狭い水面からの離着水が求められる場合もある。US-2の離水距離/着水距離は280/330メートルだ。一方で、CL-415は808/665メートル、Be-200は1000/1300メートルと、US-2は「狭い水面での離着水にも圧倒的に強い」ことになる。


 航続距離については、US-2が4500キロメートル。CL-4は2326キロメートル、Be-200は3300キロメートルだ。US-2は離島などで発生した緊急事態にも対応しやすいことになる。

 JL-600の開発を手掛けるのは中国航空集団公司だが、同機についての離着水可能波高や離水距離/着水距離については伝えられていない。航続距離については2011年時点で5000キロメートルとの数字が発表されており、US-2を上回る可能性がある。

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 新明和工業の前身は1928年に川西機械製作所から独立した川西航空機。川西航空機は終戦までに「九七式飛行艇」、「二式飛行艇(二式大艇)」などの大型飛行艇を開発した。特に「二式飛行艇」は、当時最高の性能を持つ傑作飛行艇とされた。

 同社は水上戦闘機の「強風」をベースして、陸上戦闘機「紫電」を開発。さらに「紫電」を大幅に改造し「紫電改」を開発した。「紫電改」はエンジンの性能や高品質の燃料を使えなかったことで、特に高高度での作戦行動に問題があったが、自動空戦フラップや層流翼などにより極めて高い性能を発揮した。米軍も「紫電改」を高く評価した。(編集担当:如月隼人)(写真は環球網の1月26日付報道の画面キャプチャ)