台湾の李登輝元総統は10日、11月29日の統一地方選で大敗北した国民党の馬英九総統について「無能」、「最もよいのは辞職させることだ。(彼の)メンツも保てる」、「メンツもいらないというなら、もっと強硬な方法があるだろう」などと述べた。同発言は台湾も注目された。中国大陸のメディアは、李元総統の発言に強く反発するメディアの論説を紹介した。

 李元総統はキリスト教徒であり、10日午前にキリスト教関連の式典に主席した際、取材に答えて馬英九総統についての所感を披露した。

 李元総統は、馬英九総統について「人々が直面する困難を処理できない。国民党の100年の歴史で、最も恥じるべき失敗をした。それなのに反省の姿勢をみせず、行政院の改組もせず、(行政院長=首相が辞任したにも関わらず)同じような人物にすげかえた」などと、選挙そのものだけでなく、選挙後の対応も厳しく批判。

 馬総統について「無能」を批判して、「最もよいのは辞職させることだ。(彼の)メンツも保てる」、「(総統の座にしがみつくなどで)メンツもいらないというなら、もっと強硬な方法があるだろう」と、総統職を続けることは断念すべきとの考えを示した。

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 李元総統は、台湾を民主化した功労者だ。台湾だけでなく、長い歴史を持つ中華文明圏で初めて民主社会を出現させたとも言える。もちろん「李登輝政治」に対しての批判がないわけではない。そのひとつとして、「馬英九総統のような、能力に欠ける者を引き立てる場合があった」との指摘もある。

 李元総統は、台湾で過去に進めた改革において、馬英九総統の立場は「非主流」だったと指摘した。具体的な問題点としては「中国の『法統』の考え方を抱き続けている」と説明。「法統」とは中央を負われた政権が「自らこそが正統」と唱えることを指す。つまり李元総統は、台湾では「台湾は台湾。中国(大陸)とは別の存在」との方向で改革が進められたのに、馬英九総統は「台湾に居を置く中華民国こそが、中国の正統政府」との考えから脱却しなかったと批判したことになる。

 李元総統によると、馬総統にかつて「あなたは何人か?」と尋ねたことがある。馬総統は「新台湾人」と答えた。李元総統は「どこに新台湾人、旧台湾人の区別があるのか」と違和感を感じたので「あなたはどの道を歩むのか?」とさらに尋ねた。馬総統は「李登輝路線を歩みます」と答えた。

 李元総統は改めて「その後に彼がやったことは、全く違うことだ。国民党の内部改革にも、完全に反対していた」と批判した。

 李総統は11月の統一地方選で、市や県の国民党首長がほとんど「総取り替え」になったことについて「国民党は候補者が不適切だった。人々は『商品がひどかった』と言っている。(候補者選びが)権益中心で、庶民から完全に離脱していた」と批判。

 候補者については国民党が選出したものであるが、馬英九総統も異論を出さなかったと指摘。さらに「馬英九総統はここ数年、問題を多く出した。庶民の生活は不安定になった。何をするにも自信がなくなった。それなのに、馬英九はきちんと解決しなかった」と述べた。

 李元総統は「総統をすでに辞めた者として、現職の総統を批判すべきではないと思う」、「90歳を超えて、こんなに多くを語るべきではない」と述べた上で、「しかし台湾は今、どうなってしまうか分からない状況だ。100年の歴史を持つ国民党も、今にも倒れてしまいそうだ。庶民の困っていることも解決できていない」、「(だれかが)言わねば、だれも動かない」などと、発言の真意を披露。

 馬英九総統を再び批判し「関心を持っているのは、中国と一緒にやっていくことだ。台湾には関心を持っていない。だから、青年に仕事がなくなり、給与水準が下がり、部屋代は高くなった。人々から『結婚しよう』、『子どもを作ろう』という気持ちが消えてしまった」と述べた。

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 大陸側との接近に対して批判的な自由時報は、李元総統の発言を「辞職させて、メンツは与えよう。李登輝が再び馬英九批判」との見出しで伝えた。本文は、記者との問答をそのまま再現したような構成だ。

 国民党寄りの論調が特徴の聯合報も同様の内容で報じた。

 かつて国民党の機関紙だった中央日報は「李登輝に馬英九辞職を求める資格はない!」と李元総統を強く批判する論説を発表した。同論説は李元総統は金権政治家であり、馬英九総統は「批判すべき点は多いが、彼自身は清廉潔白だと強調している」と論じ、李元総統を「まるで記憶喪失症を患っているようだ」などと非難した。

 中国台湾網、中国新聞社などは中央日報の記事を引用し、李登輝元総統が台湾で厳しい批判にさらされている印象をもたらす記事を配信した。

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◆解説◆
 中央日報は1928年、国民党の機関紙として発刊された。1990年代に報道が自由化されると、「国民党員と図書館以外の購買が激減」との状態になり、経営が悪化。国民党は売却を模索した買い取り手が現れず、2006年6月に、事実上の廃刊となった。同年9月に「ニュースサイト」として復活した。

 写真は9月に来日した際の李登輝元総統。左側は夫人の曽文恵さん。サーチナ編集部撮影。(編集担当:如月隼人)