中国政府・農業部が10月29日に江蘇省揚州市で開催した全国耕地質量建設現場会(耕地品質建設現場会)で、中国全国の耕作地の40%以上で、「土壌劣化」の現象が発生しているとの報告があったことが分かった。鉱工業による汚染物質排出や過剰な化学肥料使用などが深刻な影響を与えているという。中国新聞社などが報じた。

 湖北省農業庁土壌肥料工作ステーションの梁華東研究員は、同省において、
1畝(約6.67アール。「畝」の中国語読みは「ムー」)年間800キログラムの穀物生産が可能な「高産田」という生産性の高い耕地の全耕地中に占める割合は26.1%に低下した。

 中国では生産性にもとづいて耕地の等級を算定している。同省で30年前には60%以上あった「1等」または「2等」の耕地はすでに28.14%にまで減少した。

 中国の大穀倉地帯のひとつである東北地方黒土区では、土壌中の有機物が大幅に減少した。30年前から約30%減少して、土壌1キログラム当たり26.7グラムになった。

 現地の黒土は、動植物の死骸に由来するミネラル分や有機物が豊富に含まれる土だ。有機物などが奪われれば、土の色は薄くなる。東北地方黒土区の多くは、近代以降に開墾された。開墾初期には80-100センチメートルあった黒土層の厚さは現在20-30センチメートルになってしまった。地表に黄色い土が顔をのぞかせる地方も増えた。

 中国工程院の陳福如院士は「国はすでに、耕作地面積について18億畝(約1億2000万ヘクタール)を最低線として、それ以上を確保する考えを明確にしているがが、面積の概念だけでは全く不足だ。われわれは耕作地面積を確保すると同時に、耕作地の質を高めねばならない。耕作地の質の『最低ライン』は(面積と)同様に重要な意義を持つ」と述べた。

 過剰な化学肥料使用や鉱工業による汚染も、土地の質の劣化を大きく加速している。中国の耕作地面積は全世界の1割にも満たないのに、化学肥料は全世界の4割を使用している。農薬使用量は130万トンで、世界平均の2.5倍という。

 中国農業科学院農業資源と農業区画研究所の周衛研究員は、「工業廃棄物、科学肥料と農薬、すでに汚染されている種子の利用などが土壌の劣化が深刻化している」と指摘。周研究員によると、黄淮海平原での塩害、西北地方での土地流、中部や南部の、もともとう痩せた土地における重金属汚染など、それぞれの地方で、土壌の劣化が進んでいる。

 中国では「土地管理法」、「基本農田保護条例」などで、耕作地の確保を行っているが、「土壌の質の確保」を目的とする成文法は存在しない。そのため、土壌劣化をもたらす行為があっても、実効性のある処罰をすることが難しい状態という。

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◆解説◆
 中国では清朝時代、南部の漢族が「万里の長城」以北に進出することを厳しく制限した。清朝は、モンゴル族の支配者としても認められ、その軍事力を十分に利用して中国全国を制覇した経緯があったため、「万里の長城」以北はモンゴル人の土地として、保護した。社会制度についても、中国では長い歴史のある「世襲制を排除した科挙による官僚登用」をモンゴル人居住地区には適用せず、「世襲領主による封建制」を残した。

 万里の長城以北の多くの地方は砂漠や草原で耕作には向かなかったが、東北地方は海に近いこともあり降水量が比較的多く、近代までには農業が十分に可能な土地になっていた。

 清朝末期に漢人の進出を許すと、東北地方で広い範囲に農作が広まっていった。新たな開墾地は肥沃な土地で、東北地方は中国全国の穀倉地になっていった。しかし、「土壌のケア」をあまり考えない農業を続けたために、土壌の質が急速に劣化したと考えられる。(編集担当:如月隼人)