山西省の五台山は、由緒ある寺院が多くある「仏教の聖地」として古くから知られている。唐代には、渡航した日本人僧がわざわざ五台山を目指したとの記録もある。最近では、観光地としても人気だ。中国中央電視台(中国中央テレビ、CCTV)はこのほど、「五台山の今」を紹介する番組を放送した。訪れる善男善女は何度も何度も、さまざまな名目で金銭の支払いを要求される。道に立ちふさがり、「功徳のためだ金払え」と、酒臭い息ですごむ“僧形の男”もいた。

 中国中央電視台はまず、仏教界における五台山の位置づけを紹介。「四川省の蛾眉山、安徽省の九華山、浙江省の普陀山と並び、中国仏教の四大名山のひとつ」、「中心部だけで保存状態のよい寺院が47カ所。現存する世界最大規模の仏教古建築群」、「中国で最も早くから発達した、最大の国際的な仏教道場」、「いずれの季節に訪れても、読経が聞こえ香がただよう」、「休日ともなれば、訪れる人は絶えない」などと並べた上で、「まずは、記者が10月1日に始まる国慶節連休に五台山を訪れた観光の体験をご覧いただきましょう」と番組を進めた。

 五台山地区では、とにかく「金銭絡み」で物事が進行していた。五台山のエリアに入るのには180元程度の入場料がかかる(100元=約1740円)。地元民は自由に出入りできる。そこで、地元民が客引きだ。同行すれば地元民扱いで無料にできる。1人当たり80元の「案内料」を払ってくれれば「安上がりに中に入れる」との“商談”を持ちかける。

 エリア内では、「環境保護車」と呼ばれるバスが運行されている。入場者は、利用してもしなくても、乗車券を買わねばならない。係員に、「乗らないのに、なぜ乗車券を買わねばならないのか」と尋ねても「規則だ」の一点張りだ。
 仏殿に到着。龍袍という衣服を販売している。仏に対する帰依心などをあらわすため、仏像に着せかけるものだ。もともとは「心ある信者」が寄進するものだったが、現在では購入を強要される。買わなければ、仏殿に入っての礼拝はできない。価格は100-900元だ。

 仏殿に入るとすぐに、「龍袍は、そこに置いていきなさい」と言われる。本来ならば、自分が購入した龍袍を僧侶が仏像に着せかける姿を目のあたりにすることで、あらためて信仰心を篤(あつ)くすることができるはずだが、それもかなわない。

 寺院と寺院を結ぶ山道を歩く。すると、僧侶の姿をした男数人が立ちふさがった。さらに先に進むには「ここで礼拝をせよ」と言われる。言われる通り、合掌をしてから、深々と3度、頭を下げる。すると、「寺に功徳をするように」と言われている。何のことかと尋ねると「カネを払え」とのことだった。

 “僧侶”と言い争いになった観光客もいた。5元を渡そうとしたら「100元を支払え」と言われたからだ。「こういうことは、気持ちの問題ではないですか?」と言ってもだめだという。観光客につめより「とにかく100元」と言い続ける“僧侶”は、とにかく「酒臭かった」という。

 金を要求された観光客は「あれは偽物の僧侶だと思う」と述べた。もしかしたら、「僧侶ではない。そんなはずはない」と信じたかったのかもしれない。

 五台山では以前にも、偽の僧侶が訪れる人をだまして金を巻き上げたり、僧侶が女性信者を取り囲んで殴られる事件も発生した。僧侶と工事関係者がトラブルになり、僧侶側が工事用車両を破壊していたので「僧侶にあるまじき行為」と思って写真撮影したところ、「僧侶の攻撃対象」になってしまったという。

 中国政府・国家宗教事務局は宗教関係者でないものが僧侶や道士などの姿をして喜撰を求めたり占いをしたり物品を販売することを禁止する規則を定めた。同規則を受け、五台山も2013年2月に新たな管理規則を定めた。

 中国中央テレビは「国家宗教事務局のこのような規則はよいものだ。しかし、規則が実行されていないなら、その規則は全くの空念仏だ」と批判した。(編集担当:如月隼人)