中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会の李飛副秘書長は1日、香港で「中国中央に対抗する立場を変えない者は、過去と現在はもちろん、将来も絶対に、行政長官に就任することはできない」と述べた。中国新聞社が報じた。

 全人代は8月31日、2017年に実施される香港行政長官の選出方式を発表した。一般有権者による投票方式だが、立候補者にあたっては「指名委員会」の承認を必要とする。指名委員会は中国中央寄りの人物が多く選ばれるので、民主化の推進を求めるなどで、中国中央、中国共産党に反対する人物は事実上、立候補は不可能と見られている。

 中国大陸側は、一般住民の投票で選出することから、「2017年の行政長官は普通選挙による」と説明。しかし香港側では「民主的な選挙でない」との反発が発生した。

 李副秘書長は香港を訪れ、1日午後に香港特別行政区の政府高級幹部を前に、普通選挙についての決定事項などを紹介し、中国側の姿勢と方針を説明した。

 李副秘書長は、「香港が祖国に復帰して17年になる現在も、少数の者は依然として中国が香港に対する主権を回復した事実を受け入れようと思わず、中央の香港に対する管轄統治権を認めようと思わない」と論じ、そのような人々は「一国二制度と香港基本法の定めに『別の解釈』を施し、外部勢力の助けを借り、絶えず政治紛争を挑発し、中央政府に矛先を向け、香港をひとつの政治実体に変えようとしている」と主張した。

 李副秘書長はさらに、「全人代常務委員会はこのたび、行政長官の普通選挙制度の核心的問題を決定した。香港社会で論争を呼んだ最大の問題に、明確な規則を定めた」と発言。その結果として「中国中央に対抗する立場を変えない者は、過去と現在はもちろん、将来も絶対に、行政長官に就任することはできない」と述べた。

 中央に対立する人物を、香港政府トップである行政長官に就かせることができない理由としては「必然的に中央の香港に対する管轄統治権を損ね、必然的に国家の主権、安全、発展の利益を損ねることになる。香港の繁栄と安定を損ねることになる」と述べた。

 さらに「香港社会には、中央は香港の少数意見にも妥協してほしいとの希望もある」と述べた上で「彼らの希望とその出発点はよい。しかし、もしも普通選挙問題における政治の実質をはっきりと認識し、普通選挙問題の論議に絡む重大な原則問題をみれば、妥協はできない」と断言した。

 李副秘書長は、「香港が直面する最大の問題は、少数の問題が普通選挙を議題に、たえまなく社会の紛争を作りだし、経済発展を阻害し、民生の改善を妨害していることだ」と述べた。

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◆解説◆
 李副秘書長は「少数」とは形容したが、「依然として中国が香港に対する主権を回復した事実を受け入れようと思わず、中央の香港に対する管轄統治権を認めようと思わない」者が存在することは認めた。

 ただ、李副秘書長の説明には、かなりの疑問点がある。実際には、香港で民主化を求めるグループが6月下旬に実施した投票では、「西側と同様の選挙」、つまり「立候補に制限を設けない普通選挙」を求める意見が約70万分集まるなど、人民日報による「投票総数は10万に満たない」との事前予想よりもはるかに多い結果となった。

 さらに問題なのは「中国中央、あるいは中国共産党に対する不信や反発が多いこと」の理由の分析、または自省の言葉がまったくないことだ。あるいは「個人的には十分に分かっているが言えない」とも解釈できる。

 李副秘書長は代わりに、香港で政治的混乱が続くと「経済発展を阻害」と論じた。経済における恩恵をもたらすことで支持を固めるのは、中国共産党が国内において1990年代から盛んに用いて、成功してきた方法だ。中国共産党はその後、香港に対しても、台湾に対しても同様の発想で接するようになった。そして、かなりの程度の成功を収めたといってよい。

 ただし、中国大陸部でも「経済的恩恵さえもたらせば、支持はゆるぎなくなる」との時代は過去のものになりつつある。そもそもが、かつてのような高度経済成長は中国においても、すでに実現が不可能になった。

 台湾でも今年(2014年)3月、発効直前だったサービス貿易協定に学生らが「ノー」を突きつけた。同協定については、現在もまだ進展をみていない。

 中国中央は現在、強引であったとしても香港のトップに大陸側と親和的な人物を据えようとしている。中国国営の中国新聞社は李副秘書長の発言を「非常にきつく聞こえるが、しかし極めて切実な期待に満ちている。それは、現実にそぐわない考えの持ち主が、国を愛し香港を愛する立場に登ってくることだ」などと解説した。

 仮にそうだとしても、李副秘書長の言葉に改めて納得する人が、そうはいるとは思えない。大陸側は、香港住民の大多数を真に納得させなければ、香港と大陸の関係で、「形は統一。心は分裂」という事態がさらに進行することになる。香港人にとっても大陸人にとっても「幸せな状態」とは思えない。主要な責任は「主権を有する中国中央」にあるということになる。(編集担当:如月隼人)