香港紙・蘋果日報(アップル・デーリー)は1日付で、中国人民代表大会(全人代)務委員会が8月31日に発表した、2017年に実施する香港特別行政区特別長官の選挙方式について、「中国共産党は普通選挙実施の約束を破棄」と強く非難する論説を発表した。蘋果日報は民主派陣営に近い論調を特徴とする。運営会社、壱伝媒(ネクスト。メディア)の創業者である黎智英董事会主席(会長)は8月28日、民主派への不正な政治献金の疑いで、家宅捜索を受けていた。

 全人代常務委員会は「確固不動たる“一国二制度”、“香港人による香港統治”、高度な自治方針政策を実現し、厳格に香港基本法に基づく実行、2017年に行政長官を普通選挙で誕生させることは、中央の一貫した立場」などと説明した。

 中国大陸側は、2017年の行政長官選挙について、有権者による直接投票による選出であるとして「普通選挙」と主張しつづけている。しかし、8月31日示された選挙方式は事前の予想通り、大陸側支持者が多数を占めることが確実視されている「指名委員会」が、2、3人の候補者を認めた上での選挙だった。

 香港側ではかねてから、「民主派なども含め、自由に立候補ができる選挙でなければ、真の民主的制度ではない」とする強い反発があった。アップル・デーリーは論説の冒頭で、2017年の行政長官選挙を1997年の中国返還から30年後になると指摘し、「30年間の願望が、真っ黒な天空になる」と批判。文中でも「北京は香港に対する普通選挙の約束を破棄した」など、強い調子で今回の発表を批判した。

 論説は全人代法律委員会の李飛副主任が8月31日の記者会見で、外国人記者から「国を愛することは、必ず共産党を愛することなのか?」との質問を受けたことを紹介。李副主任は「中国共産党が全人民と各民族人民の心からの敬愛と指示を得たことは歴史が証明している。したがって、このような中央人民政府を支持することは、特に特別行政区の行政長官にとっては言うまでもないことだ」と回答した。

 李副主任はさらに、もしも2017年に政治制度が足踏みをして、香港で多くの政治的な紛糾が発生したと仮定した場合「それらはおそらく、発展のチャンスをつぶし、(発展のチャンスは)2度と来ないだろう」と言明した。

 論説は、李副主任の発言で「(香港の)広範な人々が、幻想を捨て去った。香港人の全人代に対する信用は失墜した」と論じた。

 記事は、香港で8月31日に発生した抗議デモを紹介。雨の中、約5000人が集まって「抗命(命をかけての抵抗)」と書いたプラカードなどを示し、全人代側が発表した選挙方式を「ペテン」などと激しく非難。これからの抗議活動について「多くの人が抗争に加われば、香港にはまだ希望があるということになる。人が少なければ、香港人自身が(民主化を)放棄したことになる。そうなれば、いずれにせよ、香港は暗黒時代に突入することになる」などの声が聞かれたという。

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 アップル・デーリーは1995年創刊の、香港紙。台湾にも同名の姉妹紙がある。大衆路線の紙面づくりに徹し、、芸能情報、企業や政治家のスキャンダルなどの多さが特徴。扇情的で信憑性(しんぴょうせい)に乏しい記事があるとして、批判されることもある。政治関連では、香港特別行政区政府や大陸側政権の批判が多く、香港民主派に近い論調をとる、香港でも数少ないメディアのひとつ。

 香港当局は8月28日、同氏経営者の黎智英会長と民主派労働党の李卓人主席の自宅を政治献金についての不正行為の疑いで家宅捜索した。同月31日の「選挙方式発表」の直前だったことから、民主派と支持者に対する圧力との見方が出た。(編集担当:如月隼人)