中国で、中央政府の指示に対して、「実行部隊」である官僚が反応を示さない事態が進行中という。習近平主席が主導する反腐敗キャンペーンや李克強首相が力を入れる規制緩和などへの“反動”とも解釈できる事態だ。北京紙の新京報が報じ、中国新聞社など各メディアが転載した。

 中国では通常、中央政府が方針や基準を決めて各地方政府に指示。政策を具体的に推進する「実行部隊」は地方政府の官僚ということになる。その地方政府の官僚が、中央政府の指示に反応しないケースが増えたとされる。

 まず第1の原因が習近平主席が強力に進めている反腐敗キャンペーンだ。「何かを実行すると、問題点を指摘されるのでは」と疑心暗鬼になり、とにかく「さわらぬ神にたたりなし」を決め込んでいるという。

 李克強首相が推進する規制緩和に対しても、ボイコットに近い状態が発生しているという。李首相は規制緩和の大きな手立てとして、役所による許認可事項の大幅削減を進めている。官僚にとっては「最も貴重な商品」を手放せと指示されたも同然で、当然ながら従いたくはない。

 役人からの「権限引きはがし」は、不正の温床を一掃する効果もある。しかし、“甘い汁を吸えなくなる”ことに対しての抵抗だけでなく、「その許認可事項がなくなれば、不正が横行して市場が混乱する」との、役人としての「良心」から、積極性を見せない例もあるという。

 中国中央政府「国務院」は7月、政府各部門に対する「査察部隊」を結成した。許認可事項の撤廃について、中央政府の指示を守らせるためだ。中国中央政府の中枢は北京市内の中心部にある「中南海」と呼ばれる一帯にある。

 李首相は「政令が中南海から外に出て行かない」弊害が発生しているとして、査察や監督の必要性を力説したとされる。

 新京報は「国内外の多くの研究は、一定の条件のもとであれば、腐敗も資源の再配置という機能があり、特に国有制度が主導的な経済体制では、腐敗はいわゆる経済の潤滑油であることを示している」と紹介した上で「長期的な視点での経済発展を考えれば、腐敗は社会における巨大な利益損失をもたらす。資源の再配置の間違い、社会における福利厚生の損失、信用獲得のためのコスト増大などだ。腐敗現象が経済発展に危害をもたらす研究と著作は膨大だ」と主張した。

 北京大学の周其仁教授は「腐敗は改革の成果を飲み込んでしまうだけでなく、改革に対する大衆の支持を崩壊させてしまう。社会おける激烈な衝突をもたらす。最終的には改革に対する“殺し屋”になる」と警告したという。

 同記事は、腐敗撲滅には経済面の痛みが伴うと紹介。強力な腐敗撲滅キャンペーンを実施している影響で、高級飲食業などの落ち込みが発生していることから、2014年には腐敗撲滅キャンペーンが中国の経済成長率を0.6-1.5ポイント引き下げる結果をもたらすとの研究があると紹介した。

**********

◆解説◆
 李首相にとって、規制緩和の推進は「待ったなし」の取り組み事項だ。中国では首相を含む国家首脳の任期は5年間だ。通常は、定年の問題も考慮して、2期10年間を務められる有力者が就任するが、2期目の続投が保障されているわけではない。

 李首相が目指すのは、これまでの輸出、投資の増進に加え、「内需の拡大」を「経済発展の第3の矢」として軌道に乗せることだとされる。そのための重要な手段が、規制緩和の推進だ。

 そのため、2017年前半には「内需拡大の成果が出始めている」という成果が出始めていないと、2018年3月に開催される全国人民代表大会で、改めて首相に選出されることに「黄信号」が点滅しはじめると考えざるをえない。

 残された時間は3年程度だ。時間にそれほど余裕があるわけではない。役人にサボタージュされたのでは、「志半ばにして政権を去る」事態にもなりかねない。李首相が「査察チーム」を結成したのも「業を煮やした結果」と理解できる。

 李首相は7月16日の国務院常務会議で、許認可の撤廃に抵抗する動きがあった場合には「絞め殺せ。叩きつぶせ」と激越な言葉を使って、決定を貫徹させることを求めたという。(編集担当:如月隼人)