日本、米国、欧州連合(EU)が中国のレアアース類及びタングステン、モリブデンに対して設けた輸出規制は不当だとして、世界貿易機関(WTO)に共同提訴した案件で、WTOの紛争処理上級委員会は7日、日米欧の主張を認める報告書を発表した。中国は遅くとも1年以内に是正せねばならない。中国側は「遺憾だ」の考えを示した一方で、資源の自主権が認められたことについては「歓迎」の意向を示した。中国新聞社が報じた。

 同件について、1審にあたる紛争処理小委員会(パネル)は3月26日、中国の輸出規制はWTOの規則違反とするリポートを発表した。ただし、原則論として中国が持続可能な発展のために資源保護を行う権利は認めた。

 米国はパネルの同決定を不服として4月8日に上訴。中国も、原則論としては支持されたものの、今回のレアアース規制は不当だとする決定を不服として、前後して提訴。日本とEUは同月25日に提訴していた。WTOは米国などの上訴を却下した。

 中国政府・商務部関係者は7日は、レアアースの輸出規制が不当とするWTOの決定が確定したことを「遺憾」としつつも、WTOが米国の上訴を却下し、資源保護の自主権を認めたことは歓迎すると述べた。

 中国は2010年7月に、レアアース輸出についての厳しい規制を実施すると発表。同年12月にはレアアース関連品の輸出関税を引き上げると発表した。日本に対しては、事実上の輸出停止となった。2010年9月に尖閣諸島近海で日本の海上保安庁巡視船への中国漁船衝突事件が起こっており、日本に対する輸出停止は「経済分野を利用した政治的報復」との見方が一般的だった。

**********

◆解説◆
 中国では1992年には、当時の「最高実力者」だったトウ小平が、「レアアースは紛争が発生した場合に『戦略的武器』になる」と発言したことがある。その後、ハイテク産業の隆盛などでレアアース類の重要性が格段に高まったことを考えれば、トウ小平の戦略眼は注目に値する。

 しかし中国は、WTO加盟など自らが置かれた立場が大きく変化したにもかかわらず、20年近く前の「最高実力者」の発想をそのまま取り入れて、失敗したことになる。

 中国新聞社は、WTOが「資源の自主権は認めた」と強調たが、WTOは「中国側の資源保護は単なる口実だった」、つまり「うそだった」と判断したことになる。

 中国のレアアース埋蔵量は全世界の3割程度。しかし輸出量は一時、全世界の95%以上に達した。レアアースの採掘では、同時に産出する放射性物質のトリウムの処理が必要になる。中国のレアアース輸出量が急増したのは、トリウム処理を無視したため、極めて低額で販売できたためとされる。一方で、中国のレアアース産地では、深刻な環境汚染が発生したとされる。中国の主なレアアース産地は内モンゴル自治区南部、江西省など。(編集担当:如月隼人)