中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は23日付で「香港の違法な住民投票で投票者がさらに多いとしても、13億人はいないだろう」と題する論説を発表した。香港で20日から22日まで民間により実施された、普通選挙導入についての意見を問う住民投票を批判した。同投票について人民日報は事前に「投票総数は10万に満たないだだろう」と冷笑していたが、結果として69万人(主催側発表)が投票した。中国共産党は香港での民主化要求の動きに神経質になっていると考えて間違いない。

 香港では2011年、一部市民が「金融覇権」を批判し、米国で発生した「ウオール街を占拠せよ」の運動に習って市街中心の「セントラル」の大手金融会社ロビーなどを占拠する「占領中環(セントラル占領)」が発生した。

 同運動は内部分裂で衰え、占拠者は警察に排除されたが、2013年になると改めて「占領中環」と称し、急速な民主化を要求するグループが現れた。「占領中環」グループは20日から22日まで2017年の次期行政長官選出の方式を問う、パソコンやスマートフォンを使った「電子投票」を実施した。

 中国共産党機関紙の人民日報は投票前に、「投票総数は10万に満たないだだろう。だとすれば、遊びはおしまいだ」などと皮肉ったが、主催側によると69万人が投票し、人民日報は「面子(メンツ)丸つぶれ」の恰好になった。

 人民日報社発行の環球時報は23日付で「香港の違法な住民投票で投票者がさらに多いとしても、13億人はいないだろう」と題する論説を発表。民間が行った住民投票を「違法」と決めつけ、「この投票で香港の政治改革の方向性を決定できると思っているとは、内地の社会からすれば大笑いだ」と論じた。

 論説は「香港は中国のひとつの特別行政区にしかすぎない。中央が権利を授けないおかなる組織も“住民投票”を行えない。仮に中国各地で同様の投票が行われたら、天下大乱となるのは必定だ」と主張した。

 だらに、「電子投票というのが大いなる冗談だ。インチキの余地はあり余るほどある。69万票は偽造だらけだ。全世界でインターネットの投票により重大な政治決定をしたなどと、聞いたこともない」と批判。

 民主化を求めるグループについては「香港の有権者の多数とは言えない。彼らは一時的に香港社会の大半をだましているだけ」と決めつけ「国家は主権にかかわる問題で譲歩することはない。簡単な理屈だ。香港『基本法』は国家全体の意思を反映している。香港の政治改革の核心的問題においては、13億の中国人は同じく発言権を持つ」と論じた。

 さらに「われわれは、香港が成熟したビジネス社会が持つ理性を供えていると信じる。香港において反対派は上昇期を迎えることはあるが、結局は上限がある」などと、民主化要求グループの隆盛は一時的なものとの見方を示した。

 電子投票の支持者が多かったことについては「内地(大陸部)にとっては不愉快な知らせだった。しかしこれが香港だ。われわれも次第に、順応せねばならないだろう」と、香港では、中国大陸側が歓迎できない、あるいは予期しなかった出来事がありうると認めた上で「しかし『基本法』は微動だにしない。香港の反対派はさらに順応せねばならない。かれらはこの現実を受け入れねばならない。彼らはどんなにもがいても、『基本法という手のひら』の上から飛び出すことはできないのだ」と主張した。

 中国では政府・台湾窓口部門であるる国務院台湾事務弁公室の范麗青報道官が11日の記者会見で、「台湾の前途は台湾同胞を含む中国人民が共同で決める」と発言したことで、多くの台湾人の不信の念をかきたてたばかりだ。

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◆解説◆
 香港基本法は、英国からの香港返還が決まったことを期に、中国政府が作成を本格化させた香港についての実質的な憲法。起草委員会は大陸側36人、香港側23人だった。ただし、香港側委員も民主的な手続きで選出されたわけではない。

 また、基本法の改正は全国人民代表大会の承認が必要であり、基本法の解釈権も全国人民代表大会が持つ。そのため、基本法は内容面で香港の独自性を認めているが、香港の地位については「あくまでも中国に属する特別行政区」に規定する法規と言える。

 香港基本法は行政長官や議会議員について「最終的には民主的手続きにより普通選挙で選出することを目標とする」と明記している(第45条、第68条)

 香港基本法には、住民の権利について「香港住民は言論、報道、出版の自由、結社、集会、デモ、労働組合の結成と参加、ストライキの権利と自由を有する」(第27条)と明記している。

 香港で現在、「占領中環」を主張するグループは、急速な民主化を求めてセントラル地区の占拠を主張している。仮に実施した場合、違法行為になる可能性がある。しかし言論の自由などが保障されている以上、「電子住民投票」は実際には世論調査と発表であるからだ。

 また、住民投票も2017年に実施される特別行政区長官の選挙方式について、「西側諸国並みの普通選挙」の可否を問うもので、基本法が「最終的には民主的手続きによる普通選挙」と明記している以上、「基本法に逆行している」ともいえない。

 また、投票結果をもとに政府に「言論による圧力」をかけることも、違法行為とは思えない。まともな政府ならば、民意を念頭に政策を進めて当然だからだ。

 要するに、環球時報が何を論拠に「電子投票」を違法と決めつけたかは不明。もっとも、中華人民共和国憲法も「国民は言論、出版、集会、結社、行進、デモの自由を持つ」と定めている(第35条)。しかし、これらの自由が認められているとは言い難い状況だ。

 台湾の謝長廷元行政院院長は2013年に訪日して行った講演で、中国における言論の自由について「ものを書いたり発表する自由はある」と断言。一呼吸おいておもむろに、「問題は、書いて発表した後にも自由があるかどうかだ」と述べた。聴衆は爆笑した。(編集担当:如月隼人)