北朝鮮の「罵詈雑言(ばりぞうごん)」がエスカレートしている。オバマ大統領を「サル」、朴大統領を「老いぼれ娼婦」と表現するなど、露骨な差別用語を使うことも躊躇(ちゅうちょ)しない。さらに、韓国のセウォル号沈没で犠牲となった高校生を「魚のエサ」と形容した。北朝鮮の「暴言」は今に始まったことではないが、このところは「自国の利益を考えているのか」と疑うような発言が目立つ。

 北朝鮮の異様な言い回しとしては「ソウルを火の海にする」、「無慈悲な鉄槌を下す」などが有名だ。戦争の回避や人命の尊重などの価値観とは全く相入れない表現ではあるが、彼らが「自らに利益をもたらす言葉という武器」とみなしているとすれば、“理解”できなくもない面があった。

 北朝鮮の過激発言を受け取る側、特に韓国民からすれば、「またか。いつものこと」と思いつつも、北朝鮮の過激で異常な言動に恐怖を感じ、自国による対北強硬策を回避すべきとの感情が強まる可能性があるからだ。とすれば、北朝鮮にとっては利益がでてくることになる。

 同国が苦しい状態にあるのは周知のことだ。「先軍政治」つまり、軍事をすべてに優先すると言っているが、これも外部に対する「言葉の武器」の側面があると考えてよい。同国にとって喫緊の課題であるのは、破綻(はたん)状態となった経済の立て直しであり、このままの状態では国が立ち行かなくなるのは、指導層にはよく分かっているはずだ。

 そのために北朝鮮は、「瀬戸際外交」を続けてきた。米国や韓国、さらに日本に対しては、ぎりぎりまでブラフ(脅し)をかけることで、できる限りの利益を引き出そうとした。

 「血で築かれた盟友」であるはずの中国に対しても「瀬戸際外交」を実施。北朝鮮が崩壊して韓国主導で半島が統一されれば、中国との国境まで米軍が進出すると考えねばならない。中国にとっては「悪夢」であり、解放軍にとっては特に、容認できない事態だ。

 北朝鮮は、「中国がわが方をつぶすようなことはできない」と判断した。事実、北朝鮮の核やミサイルの実験に対して、中国は強い不快感を示しつつも、北朝鮮を崩壊させる経済関係の全面停止はできないでいる。

 中国としてみれば、北朝鮮には「米国との盾」となって存続してほしいが、暴発するのは困る。そのため、経済的な利益を誘導することで、「中国の言うことをよく聞く」ように北朝鮮を誘導しようとしつづけてきたが、なかなかうまく行かない。

 北朝鮮が「閉ざされた国」であることで、中国東北地方の黒龍江、吉林の2省の経済開発が阻害されている面がある。中国としては「われわれの支援がなければ国が成り立たないくせに、『儲かる話』を持って行っても、ないがしろにする。それどころか、国策である東北振興政策を妨害しているのと同じだ」として、“怒り心頭”といったところだ。しかし、北朝鮮をつぶすわけにはいかない。

 北朝鮮が、国が国際的に孤立し、ここまで疲弊しているにもかかわらず、外国が“手出し”の出来ぬような状態を保ってきたことは、「見事な瀬戸際外交の手段」だったとも言える。(編集担当:如月隼人)