台湾・民進党の蘇貞昌主席は23日、同日午前に馬英九総統(国民党主席)が行った記者会見を受け、政府に抗議する学生らと早い時期に対話を行った李登輝元総統との違いを強調し、「馬英九総統は、はなはだしく劣る」と批判した。

 支持率が10%を切って久しい馬政権が中国大陸とのサービス貿易協定を強力に進めたことで、台湾の政治に大混乱が発生した。学生ら反対派は政権側が民主主義を踏みにじったとして、18日夜に立法院(国会)に突入。24日現在も議場などの占拠を続けている。23日には別の反対派集団が行政院(内閣)に突入したが、警察によって24日未明に強制排除された。いずれにしろ、政治の中枢機関に反対派が突入するという、世界的にも稀(まれ)で台湾では前代未聞の事態だ。

 馬英九総統は23日午前に記者会見を行い、「サービス貿易協定には多くの誤解がある」とのべ、「大陸から労働者や移民が大挙して押し寄せ、台湾人労働者は失業する」、「台湾の出版業界が大陸に牛耳られる」、「大企業重視、中小企業軽視」などはいずれも誤解と述べ、「撤回はありえない」と強調した。

 ただし、台湾経済に有益ということについて具体的な論拠はあまり示さず、協定が承認されなければ「国際的信用にかかわる」などと発言。台湾人からは「国際的信用を失うとは、馬英九が中国に対して言い訳ができなくなるということ」などの声もでた。

 馬総統は学生の立法院占拠を「違法」と批判。心情については一部理解できると述べたが、対話の意思は示さなかった。

 台湾・民進党の蘇貞昌主席は23日、同日午前に馬英九総統(国民党主席)が行った記者会見を受け、政府に抗議する学生らと早い時期に対話を行った李登輝元総統との違いを強調。「李元総統は問題が発生して5日目に学生の指導者と面会して意思疎通をした。馬英九総統は、はなはだしく劣る」と批判した。

 馬英九政権は、台湾で政治の二大焦点になっている原発建設、さらに大陸とのサービス貿易で、支持率面における“末期状態”が続いているにもかかわらず、反対の声が強い政策を強引に進めようとしとして大きな批判が発生した。政策への反対派にすれば、馬政権が約束を実行しない/撤回するなどの「だまし討ち」を繰り返したこともあり、怒りが爆発した格好だ。

 台湾では11月29日に主要7地域の主張を決める「七合一選挙」が実施される。2016年には次期総統選がある。国民党内部も「一丸」というわけでなく、馬英九総統と“二人三脚”で、民進党からの政権奪回などを戦ってきた王金平立法院院長も党籍抹消処分を受けるなどの混乱が発生している(裁判所が処分保全の仮処分)。

 馬政権が「七合一選挙」に惨敗した場合、総統選を迎えるにあたり「選挙に勝てない党の顔」として、国民党内で「馬英九降ろし」が発生する可能性もある。

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◆解説◆

 台湾では1990年3月にも、学生約6000人が政府に対する抗議運動を行った。いわゆる「野百合学運」だ。当時の台湾は、「中華民国は中国全土の正統政府」との主張にもとづき、台湾に移る前に選ばれた大陸部各地の代表議員による国民大会の制度を維持していた。また、1948年から戒厳状態が続いていた。

 学生らは国民大会解散や、戒厳を定めた「臨時条款」の撤廃、党派や立場を問わず広い範囲の人々を集め国家の重要方針を決める「国是会議」の開催などを要求した。

 学生らは3月16日から中正記念堂広場に座り込み、ハンストなどを決行。国民大会廃止の要求をまとめて正式に発表したのは3月18日だった。李登輝総統代行(当時、蒋経国総統の死去に伴う副総統からの昇格)は20日には国是会議の方針を発表し、憲政問題や政治改革の問題を処理することと、日程表の作成を約束した。

 李総統代行は翌21日に学生代表53人を総督府に招き、「次期総統が選ばれる前に国是会議を開催する。出席者については、社会の各層、各党派から公平な人選を行う」、「国是会議では、臨時条款の撤廃を議論する」、「国会の全面改革を行う」、「政治経済改革の日程表を作成する」などの内容を盛り込む「共同認識」を発表した。

 李総統代行には国民党内部の意思統一という難題が残っていたため、学生側は「李総統が上記の要求を満たせなかった場合、原則を堅持し闘争を続ける」との内容を盛り込むことを求め、李総統も認めた。

 広場を占拠した学生は投票の結果、22日早朝から撤退を開始した。李総統代行は同年6月に国民党と民進党の支持を得て国是会議を開催。戒厳の終了や新たな国会制度による民主化の推進に成功した。

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 これまでにも、李登輝元総統と馬英九総統の比較は多く発表されている。多くは「『台湾の父』と『独裁体制の子』の違い」、「政権掌握能力は天地の差」など、馬総裁を批判するものがほとんどだ。

 李総統も必ずしも完璧ではなかったとした上で、李元総統は「私がいるぞ」とばかりに、人民にはっきりした立ち位置と存在感を示した。馬総統に対してのイメージは「いったいどこにいる?」で、不明瞭さが目立つとの批判もある。(編集担当:如月隼人)